「事件」という言葉について

弁護士が依頼を受けるにあたっては、依頼の内容を明らかにする必要があります。

例えば、被った損害について誰かに賠償を求めるのであれば、それは損害賠償請求の依頼ということになり、弁護士の側では「損害賠償請求事件」として分類することになるでしょう。

この「事件」という言葉について、しばしば抵抗を覚える方がいらっしゃるようです。
おそらく「事件」というと、テレビや新聞で報道されるような重大な刑事事件・トラブルを想起してしまうのだと思います。

しかし、「事件」という言葉にそれほどの意味はなく、「事案」や「案件」といった程度の意味しかありません。
離婚の依頼であれば離婚事件ですし、相続の依頼であれば相続事件といった形で表現しているにすぎません。

契約書等に「事件」という記載があると、「先生、私のケースは『事件』になってしまうんですか!?」といった質問を受けることもあり、その都度上述のような説明を行うのですが、それでもやはり「事件」を気にされる方もいるのは事実です。

専門家の使う用語と日常の用語のニュアンスに違いがあるというのは、必ずしも法曹の世界だけに限られないことだと思いますが、今一度一般的な感覚とのずれを意識して、普段から丁寧な説明を心がけたいなと感じます。