遺言書を書いたら相続人が揉めることになる?

遺言書を書いた方がいいのか書かない方がいいのか、どちらの方が相続人は揉めないのだろうか、という観点で悩まれることがあるかもしれません。

人間関係の問題ですので、弁護士の立場からもどちらが絶対にいいということは言えないものの、基本的には遺言書を書いておいた方がスムーズに相続手続きを行えるといえるかと思います。

遺言書がない場合、相続人は遺産分割協議を行って、誰が何を相続するのかを決めていかなければなりません。

相続人間の仲が良いか悪いかというのもありますが、そもそも相続人同士であまり関わりがなくなっていたりはしないでしょうか。

険悪な関係の人と協議するのも困難ですが、疎遠な人と協議をするというのもストレスがかかるものです。

遺言書を書いた場合であっても、遺留分の問題などが生じる可能性は否定できないものの、基本的に遺言書の内容に沿って相続手続を進めていけばいいということになるので、相続人からすれば遺言書がない場合と比べてやりやすい場合が多いかと思います。

遺言書の内容で相続人が揉めるのではないか、と危惧されている方は、ぜひ遺言書がない場合に揉めずに済むのかという観点から考えていただくとよいかと思います。

生前疎遠だった人の相続人になったとき

生前は特にかかわることもなく疎遠だった親戚が亡くなり、実は自分が相続人だったというご相談を受けることがあります。

典型的なのは、おじ・おばが亡くなったケースで、そのおじ・おばに子がおらず、両親も亡くなっており、おじ・おばのきょうだいにあたる自分の親もすでに亡くなっているようなパターンです。

このような状況になっている場合、おじ・おばとの交流がすでに途絶えてしまっていることは珍しくないかと思います。

相続人になっていることが分かったとき、どのような選択肢があるでしょうか。

亡くなった方に財産がなく、むしろ借金があるようだ、ということであれば相続放棄を検討することが多いでしょう。

ところでこの相続放棄、借金を相続しないために利用するイメージが強いかもしれませんが、それ以外の場面で利用することもあります。

今回のケースのように、生前交流がなくなっていた場合だと、財産の有無や額にかかわらず相続をしたくないという方もいますし、遠方の不動産が相続財産にある場合だと扱いに困るため関わりたくないという方も少なくありません。

また、相続放棄しない場合には他の相続人(この状況ですとやはり関わりがなくなっていることも多いかと思います)とやりとりをしていく必要がありますが、それをしたくないというニーズも多いです。

こうした観点から、相続したらプラスの財産があるかもしれないという状況においても、弁護士に相続放棄の依頼をする方は珍しくありません。