裁判という言葉からイメージするものが,弁護士から尋問されている映像だという人は多いかと思います。
たしかに裁判の中で一番裁判らしい手続なのが尋問手続かなぁという気がします。
もっとも,裁判を行った人すべてが尋問を経験するのかというとそうではないですし,
なんなら尋問手続を行うのはごく一部の裁判だといっても過言ではありません。
裁判の種類にもよってきますが,基本的に裁判は書面による主張の応酬であり,
双方の主張が出尽くした段階で,和解が試みられることが多いです。
ここで和解が成立すれば裁判はそこで終わるわけですが,
和解が成立しないと,裁判官の判決に向けて話が進んでいきます。
そして,判決に進んでいく場合は,判決の前に尋問手続が行われることがあるのです。
幸か不幸か尋問されることになったという方は,大変緊張するかと思います。
しかし,ひとつ安心してほしいのは,尋問手続によって裁判の結果が決まるのではないということです。
もちろん,尋問でどんな話をしたかということも大事ですが,
そもそも双方の主張はその時点で書面により提出されているわけです。
ですから,訴訟当事者の方が尋問を受ける場合,その方が何を訴えたいのかは基本的にみんなわかっていますので,
尋問で一からすべてを話さなきゃいけない,と考える必要はありません。
逆に何が聞かれる(見られている)のかというと,これまでの主張と,尋問される方の話す内容が整合的かどうかといった点です。
これまでAという事実を主張していた方が,急にBという事実を主張をしたり,あるいはAという事実を前提としたら起きえない事実を述べたりすると,
Aという事実があったかどうかは非常に疑わしくなります。
きちんと記憶のとおりそれまでの裁判で主張してきたのであれば,尋問でもその記憶どおりに話しさえすれば,特に問題はないはずです。
ここまでの内容でも少しわかるかと思いますが,尋問は加点というより減点の視点で見られることがあるかもしれません。
つまり,尋問でいいことを言ったから有利になるというよりは,これまでの主張と矛盾しなければマイナスなしで,
矛盾することを言っていると信用が下がる(マイナスになる)という感じです。
尋問されることになった方は緊張すると思いますが,自分の記憶どおりに話していれば特に問題はないんだと思っていれば,
少しは気が楽になるのではないかと思います。