相続した不動産の所有権放棄 第3回

相続した不動産の所有権放棄 第3回です。

前回列挙した土地は本制度を使えなくなるわけですが,特に⑤の境界が明らかでない土地⑥崖があり管理に費用がかかる土地⑦通常の管理等を阻害する工作物や車両や樹木がある土地 を除外している点は,新たな問題を想起させます。

すなわち,山林等の多くの方が放棄したい土地は,⑤の境界が不明なケースが非常に多く,所有権放棄するために境界画定のために多額の測量費用が必要となっては本末転倒ですし,⑥や⑦のように崖や処分困難な工作物や樹木がある土地こそ,本来所有者は放棄がしたいですし,その土地から生じる責任を免れたいと考えるはずであるからです。

本来,詰めるべき議論は,人口減少とそれに伴う過疎化,管理者不在の土地の増加に伴い,当該土地に管理が行き届かなくなって,崖崩れや工作物の倒壊等により第三者に損害が生じた場合に,誰が責任を負うのかという話であるように思います。別途940条の改正も見込まれていますが,940条改正(放棄した土地に関する管理責任)で責任限定を行う方向で議論を進めるのであれば(この方向は適切だと思います),反対に当該土地に起因する損害の被害者(第三者)の救済の問題が出てくるわけで,その救済は結局国家が行うのであれば,リスクがある土地の管理を除外するのではなく,リスクがある土地も国庫に帰属させたうえで,当該土地から生じる損害については,国賠で救済するという方向もあったように思いますし,今後はそのような改正がなされることを期待します。