仮想通貨の相続手続

2022年6月ももう終わりですね。

1年の半分が終わってしまいました。

東京も異常な暑さが続いていますね。

前回は、相続税を適切に申告・納付しないとどうなるかついて書きましたが、今回は、仮想通貨の相続手続について書いてみようと思います。

ネットやニュースなどでビットコインなどの仮想通貨という言葉をお聞きになった方も多いのではないでしょうか。

現在、有名なビットコインを含めて様々な仮想通貨は発行されており、取引量の増加などに伴い、仮想通貨についての法体制が整いつつあります。

所得税法上の取扱いとしては、仮想通貨自体を使って得た利益について、原則「雑所得」になるという指針が公表されています。

それでは、仮想通貨の相続方法や相続税の取扱いはどうなっているのでしょうか。

そもそも仮想通貨に財産的価値があるのかという点が気になるのではないでしょうか。

この点については、資金決済に関する法律により、仮想通貨に財産的価値があることが規定されていますの。

したがって、仮想通貨に財産的価値があることが法律上認められているといえます。

仮想通貨の入手方法としては、①取引所で購入する、②他の人から送金を受ける、③マイニングをするという3つの入手方法がありますが、一般的には、①取引所で購入することが多いと思われます。

仮想通貨は、通常、「ウォレット」という財布の機能を有するものに保管されています。

「ウォレット」の形態は、パソコン上にあるものやウェブ上にあるものなど様々ですが、どの形態であっても、仮想通貨を相続する場合、相続人は仮想通貨を探すことから始める必要があります。

もし、被相続人が仮想通貨を購入していたということがわかったとしても、それがどこにあるかは問題となります。

仮想通貨は「ウォレット」に保管されていますが、「ウォレット」に入るためには、アドレスやパスワードが必要です。

「ウォレット」のアドレスやパスワードが分からないと、残高があるのに仮想通貨が使えない状況になります。

ご自身が仮想通貨を所有している場合は、相続のことを考え、家族等に「ウォレット」のアドレスやパスワードが分かるようにしておくことも検討しておいた方がよいでしょう。

それでは、仮想通貨を相続した場合に、相続税が課されるのでしょうか。

この点については、参議院の財政金融委員会において、国税庁の見解が示され、仮想通貨にも相続税が課されることが明らかとなりました。  

以上のように、仮想通貨の相続方法や税制については、相続税が課税されることが明らかになったものの、いまだ流動的な部分も多いところですので、今後も仮想通貨に関する政府の動きを注視することが重要です。

相続税を適切に申告・納付しないとどうなるか

2022年5月も終わりが近づいてきました。

東京も蒸し暑くなってきましたね。

前回は、夫婦間の贈与について書きましたが、今回は、相続税を適切に申告・納付しないとどうなるかについて書いてみようと思います。

まずは相続税の申告期限を確認しましょう。

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

通常は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内ということになるでしょう。

次に、自分が相続税の申告が必要かどうかを確認しましょう。

自分が相続税の申告が必要かどうかを知るためには、相続財産の額が基礎控除額の範囲内か確認する必要があります。

相続税は、相続財産を取得した方が、その取得した財産の価額に応じて支払うべき税額を算出し、納付することになります。

被相続人の相続において、相続税の基礎控除という制度があり、相続財産の合計額がこの基礎控除額以下であれば、そこまでは相続税が課税されず申告の必要もありません。

基礎控除の金額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。

それでは、相続税の申告・納付をしなかった場合はどのようなペナルティがあるのでしょうか。

相続税を適切に申告・納付しなかった場合、①延滞税、②無申告加算税、③過少申告加算税、④重加算税といったペナルティが課される可能性があります。

①延滞税は、相続税を定められた期限までに納付しなかった場合に課されるものです。

②無申告加算税は、相続税の申告を行わなければならないのに、正当な理由がなく、申告期限までに申告を行わなかった場合に課税されるものです。

③過少申告加算税は、相続税の申告はしたものの、税額を少なく申告していた場合に課されるものです。

なお、自主的に申告した場合は、過少申告加算税は課されません。

④重加算税は、相続財産を意図的に隠したり、偽ったりした場合に課税される税です。

それぞれのペナルティによって課税されるパーセンテージも異なりますが、決して少額で収まるとは限りませんので、相続税を適切に申告・納付することが大切です。

夫婦間の贈与

2022年4月も終わりが近づいてきました。

東京の花粉症もやっと終わったでしょうか。

前回は、相続税の計算方法について書きましたが、今回は、夫婦間の贈与について書いてみようと思います。

そもそも贈与税はどのような場合にかかるのでしょうか。

贈与税は、贈与をした人にはかかりません。

贈与税は、贈与を受けた人に課される税金です。

贈与をすると必ず贈与税がかかるのでしょうか。

贈与税には110万円の基礎控除があり、110万円を超えた贈与額に課税されることになります。

それでは、夫婦間でも贈与税がかかるのでしょうか。

夫婦で一緒に生活をしていると、生活費を渡したり、自動車を買ったりする場合など、夫婦間のお金や物のやり取りはよくあることだと思います。

もっとも、夫婦間でも財産を無償で譲渡するという行為は贈与に当たりますので、原則として贈与税がかかるため注意が必要です。

ただし、夫婦間でも例外的に贈与税がかからない場合もあります。

まず、贈与税にも110万円の基礎控除がありますので、その範囲内であれば、夫婦間の贈与であっても贈与税はかかりません。

具体的には、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産額が、110万円以内の場合には、贈与税はかからず申告も不要です。

また、国税庁によると、「扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」には贈与税はかからないとされています。

「通常必要と認められるもの」とは何かというのが問題となりますが、日常生活に必要な生活費、学費、教材費や文具費といった教育費がこれにあたると解されています。

ただし、 あまりに高額な物品を譲り渡す場合は、嗜好品として通常必要とは認められず、贈与と評価される可能性があるため注意した方が良いでしょう。

他にも、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで控除できるという特例が設けられています。

夫婦間で居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与を検討されている方は、かなりの節税になる可能性がありますので、専門家にご相談されると良いと思います。

相続税の計算方法について

2022年3月も終わりが近づいてきました。

東京の花粉症のピークもそろそろ終わりでしょうか。花粉症は本当につらいですね。

前回は、被相続人が亡くなった後、相続税申告までの手続に関する期限にはどのようなものがあるかについて書きましたが、今回は、相続税の計算方法について書いてみようと思います。

相続税は、相続財産を取得した方が、その取得した財産の価額に応じて支払うべき税額を算出することになります。

被相続人の相続において、相続税の基礎控除という制度があります。

基礎控除の金額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。

相続財産の合計額がこの基礎控除額以下であれば、そこまでは相続税が課税されず申告の必要もありません。

他方、相続財産が基礎控除額を超えた場合は、相続税申告をする必要があり、課税遺産総額に対して相続税が課税されます。

相続税の計算方法は、以下のとおりです。

①各相続人の相続税の課税価格を算出します。

②相続税の総額及び各相続人の算出相続税額の計算をします。

③各相続人の納付すべき相続税額の計算をします。

細かい計算は、相続税の専門家に確認した方がよいでしょう。

このようにして計算した相続財産総額が基礎控除額の範囲にある場合は、相続税申告は不要です。

しかし、支払うべき相続税が0円の場合であっても、相続税申告が必要な場合もあります。

例えば、もともとの遺産総額は基礎控除額を超えていた場合で、配偶者控除や小規模宅地等の特例といった税の軽減措置を利用することによって相続税が0円となる場合も、相続税申告は必要になります。

また、相続税の申告と納税には、相続開始10か月以内という期限があります。 申告だけではなく、納税も含めて10か月以内に行わないといけない点に注意が必要です。

相続税の計算や申告の要否についての判断は複雑になりがちですので、難しいなという方や忙しくて自分で申告の準備をする時間がないという方は、相続を専門に扱っている弁護士や税理士に相談してみるとよいでしょう。

相続に関する期限の整理

2022年2月も最終日ですね。

1年のうち6分の1が終わりました。早いですね。

東京も暖かくなってきまして、花粉が飛び交ってますね。

前回は、どのような理由でも相続放棄は認められるのかについて書きましたが、今回は、被相続人が亡くなった後、相続税申告までの手続に関する期限にはどのようなものがあるか整理してみました。

相続が発生すると、葬儀を行い、相続財産を把握し、相続税を支払う必要があるかどうか調査するなど様々なことをしなければなりません。

この中には、期限が決められているものが多くあります。

相続が発生してから、慌てて確認すると誤った対応をしてしまう危険性がありますので、お早めに確認しておくことをお勧めします。

まず、死亡届は、死亡後7日以内に提出する必要があります。

死亡届は、医師に作成してもらう死亡診断書と一体になっています。

死亡届と火埋葬許可申請書を市区町村役場に提出し、火葬許可証をもらいます。

この火葬許可証を葬儀社に提出して葬儀の申込みをします。

相続が発生した場合、通常の流れとして、遺言の有無の調査、相続人調査、相続財産調査を行います。

もし遺産の中に借金が含まれている場合、その借金も相続の対象になります。

特にプラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は、相続人が借金を支払わなければならなくなってしまいますので、被相続人の借金を相続したくない場合は、相続放棄を検討することになります。

相続放棄には期限があります。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続放棄をするかどうか決めなければなりません。

次に、相続人が被相続人の遺産を相続した場合、被相続人の生前の所得税を申告する必要がある場合があります。

これを、所得税の準確定申告といいます。

所得税の準確定申告とは、被相続人が所得税の申告義務を負っていた場合に、相続人が被相続人の代わりに確定申告を行うものです。

通常の確定申告は、対象年度の翌年の2月16日から3月15日までですが、準確定申告は、被相続人の死亡後4か月以内となっています。

もし、遺言があり、自分が全く相続財産をもらえない場合などは、遺留分侵害額請求をするかどうか検討する必要があります。

遺留分とは、相続人のうちの一部の方について、相続財産のうち一定の割合を認めるものです。

遺言や死因贈与などによって最低限の取得分である遺留分を侵害された場合、法定相続人は遺留分の侵害者に対し遺留分侵害額を請求することができます。

兄弟姉妹を除く法定相続人は、遺留分侵害額請求をできる場合がありますが、その期間は法律によって決められています。

遺留分侵害額請求をすることができるのは、被相続人の死亡と遺留分侵害の事実を知ってから1年以内です。

また、被相続人の死亡から10年が経った場合には、たとえ遺言や死因贈与などによる遺留分侵害の事実を知らなくても、遺留分侵害額請求ができなくなるので注意が必要です。 

  

被相続人の遺産の金額によって相続税が発生する場合があります。

相続税には基礎控除が定められているので、基礎控除の額までであれば相続税を支払う必要はありません。

他方、基礎控除額を越える遺産がある場合は、原則として相続税の申告と納税が必要になります。

相続税の申告と納税には、相続開始10か月以内という期限があります。 申告だけではなく、納税も含めて10か月以内に行わないといけない点に注意が必要です。

その他にも期限が定められているものがありますので、難しいな、わからないなという方は、相続を専門に扱っている弁護士や税理士に相談してみるとよいでしょう。

相続税申告の流れ

2022年1月も終わりが近づいてきました。

1年の内、もう残りが93%になってしまいました。

東京もまたコロナが急増してますね。

かからないように注意したいですね。

前回は、どのような理由でも相続放棄は認められるのかについて書きましたが、今回は、相続税申告の流れについて書いてみたいと思います。

相続が発生すると、葬儀を行い、相続財産を把握し、相続税を支払う必要があるかどうか調査するなど様々なことをしなければなりません。

しかも、やらなければならないことの中には、期限が決められているものが多くあります。

そのようなバタバタした状況の中で、被相続人が亡くなった後、そもそも相続税の申告が必要なのか、自分が相続税を支払うことになるのかなどについて、お悩みの方もおられるのではないでしょうか。

相続税は、相続財産を取得した方が、その取得した財産の価額に応じて支払うものです。

被相続人の相続において、相続税申告をする必要があるかどうかの目安として、相続税の基礎控除というものがあります。

相続税の基礎控除とは、相続財産の合計額がこの基礎控除額以下であれば、そこまでは相続税が課税されないという制度をいいます。

基礎控除の金額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されますので、まずは、被相続人の相続についての基礎控除額を計算してみると良いでしょう。

基礎控除の金額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されますので、最初に法定相続人の数を確定させる必要があります。

相続人であれば、役所で戸籍謄本を取得することができますが、複雑な事案ですと自分で取得するのが難しい場合もあるため、専門家に依頼して調査してもらうこともできます。

また、被相続人にどのような相続財産があるかを確定する必要がありますので、その調査をしなければなりません。

相続財産を調査した後は、全ての相続財産の評価額と基礎控除額を比較してみましょう。

相続財産が基礎控除額の範囲内であれば相続税を支払う必要はありませんが、相続財産が基礎控除額を超える場合は、原則として相続税の申告と納税が必要になります。

相続税の申告と納税には、相続開始10か月以内という期限があります。

申告だけではなく、納税も含めて10か月以内に行わないといけない点に注意が必要です。

どのような理由でも相続放棄は認められるのか

2021年12月も終わりが近づいてきました。

そろそろ年末感が出てきましたね。

東京も乾燥がひどくなってきました。

風邪を引かないように注意したいですね。

前回は、相続人全員が相続放棄をするとどうなるかについて書きましたが、今回は、どのような理由でも相続放棄は認められるのかについて書いてみたいと思います。

被相続人が亡くなった後、相続人の方で相続放棄をするかどうか検討している方もおられるのではないでしょうか。

相続放棄は、相続人を最初から相続人ではなかったことにする手続です。

相続放棄をするにあたって、なぜ相続放棄をしたいと考えるのかは人それぞれではないかと思います。

相続放棄をするにあたって、自分が相続放棄をしたい理由によっては裁判所に認められないのではないかと心配されておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

相続放棄をする理由のうち典型的なものとしては、被相続人のプラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い、被相続人の財産や借金が全くわからない、そもそも相続に関わりたくないというものが挙げられます。

結論からいうと、相続放棄をする理由や動機に限定はありません。

法律上も限定はありませんし、裁判実務上も相続放棄をする理由によって、相続放棄を認めたり、認めなかったりということはありません。

以下の場合は、相続放棄をするメリットが非常に大きいといえます。

・被相続人が生前に多額の借金を抱えており、被相続人のプラスの財産よりも借金の方が多い場合

・被相続人の生前に借金があったとは聞いていたものの、被相続人との関係が希薄だったため、被相続人が誰に対しどのくらいの負債を抱えているかがわからず、いつどのような請求をされるかわからないといった場合

また、他の相続人との関係性が良くなかったり、話し合いが難しい相続人がいるなどして遺産分割協議に関わりたくない場合や、被相続人の生前全く関わりがなかったため相続する意思が全く無い場合も、相続放棄をすることで、相続に関わらないという目的を達成することができます。

相続放棄をご検討されている方は、相続に詳しい専門家を探してみるとよいでしょう。

相続人全員が相続放棄をするとどうなるか

2021年10月も終わりが近づいてきました。

もう年末が見えてきましたね。

東京も急に寒くなってきました。

前回は、個人再生と生命保険の関係について書きましたが、今回は、相続人全員が相続放棄をするとどうなるかについて書いてみたいと思います。

被相続人が亡くなった後、相続放棄をするかどうか検討している方もおられるのではないでしょうか。

相続放棄とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も一切放棄することを家庭裁判所に申述する手続です。

相続放棄が家庭裁判所に受理されると、相続放棄の申述をした相続人は、初めから相続人ではなかったことになります。

そうすると、法定されている次の順位の法定相続人が実際に相続人となることになります。

被相続人の配偶者は常に相続人になりますが、第1順位の子が全員相続放棄をした場合は、第2順位である被相続人の両親が相続人となります。

もし、被相続人の両親が既に亡くなっていた場合は、被相続人の祖父母が相続人となります。

そして、被相続人の両親や祖父母全員が相続放棄をした場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。     それでは、これら全ての相続人が相続放棄をした場合は、どうなるのでしょうか。

相続放棄は最初から相続人でなかったことになります。

それでは、被相続人の子が相続放棄をした場合、被相続人の孫(相続放棄をした者の子)は相続人となるのでしょうか。

この場合は、被相続人の孫は、相続放棄をした被相続人の子に代わって相続人となるわけではありません。

あくまで、被相続人の子が相続放棄をした場合は、第2順位の法定相続人が相続人となります。

他方、代襲相続とは、被相続人の死亡時に、本来相続人となるはずであった者が既に死亡している場合に、本来相続人となるはずであった者の子が代襲相続人として被相続人の財産を相続するという制度です。

被相続人の子が既に死亡しており、その後被相続人が死亡した場合、被相続人の孫が代襲相続人となるということです。

相続放棄と代襲相続は似ているため、勘違いをしやすいので注意が必要です。

相続人全員が相続放棄をしたため相続人がいなくなった場合、被相続人の財産は法人とみなされます。

そして、利害関係人が家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立てをすることによって、相続財産管理人が選任されると、当該管理人が法人化された相続財産を管理、清算していくことになります。

自己破産と相続放棄の関係について

2021年8月も終わりが近づいてきました。

東京も暑さが落ち着いてくれるとよいですね。

前回は、リボ払いについて書きましたが、今回は、自己破産と相続放棄の関係について書いてみたいと思います。

相続が生じた場合で、被相続人に多額の借金があった場合、相続人は、通常、相続放棄を選択するのではないでしょうか。

相続放棄とは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述することによって、プラスの財産もマイナスの財産も全て相続しないようにする手続のことをいいます。

相続放棄が認められると、申述人は初めから相続人ではなかったことになります。

他方、自己破産とは、債務者の現在の資産や収入では、すべての借金の返済を続けていくことが不可能な場合に、自ら裁判所に対して返済が不可能であることを申し立てて、最低限の生活に必要とはいえない財産や、不動産などの高価な財産を債権者への返済に充てる代わりに、一部の例外を除いて全ての債務の返済義務を法的になくす手続です。

このように、相続放棄も自己破産も借金がなくなるという点だけを見ると、同じような制度のようにも思えます。

相続放棄と自己破産の違いはどこにあるのでしょうか。

相続放棄と自己破産とでは、税金の滞納があった場合の取り扱いが異なります

相続放棄の場合は、被相続人が有していた一切のプラスの資産や権利関係はもちろん、借金も引き継がないことになります。

被相続人が滞納していた税金の支払義務についても、相続放棄によって相続人が引き継がなくてもよいことになりますので、被相続人の税金を支払う義務はありません。

自己破産は、債務者が支払不能になってしまったため支払うことのできない借金を、裁判所に特別に免責してもらう制度です。

ただし、自己破産の場合は、非免責債権といって、税金の支払い義務はなくなりません。

そのため、自己破産が認められたとしても、税金は支払わなくてはなりません。

他にもいろいろな違いがありますので、相続と債務整理に詳しい弁護士に相談してみると良いでしょう。

以上

不動産実務研修

もう5月も終わり6月に入りました。

東京も緊急事態宣言が解除され,八重洲も人手が戻りつつあります。

まだ油断はできないので,やれることを一つずつやっていきたいと思っています。

前回は,国税庁が取りまとめた新型コロナウイルス感染症の影響により期限までに相続税の申告等が困難な方々のためのFAQをご紹介いたしました。

今回は,先日,不動産売買等に関して,大手不動産会社の研修を受けましたのでその内容について触れてみたいと思います。

 

相続,後見や債務整理案件を取り扱っていると,不動産の査定や売買は避けて通れません。

通常は,お付き合いのある不動産業者様に物件調査をしていただいたり,査定をしていただいております。

不動産を売却するにあたって,買主様を探していただくことも多々あります。

 

今回は,より具体的に重要事項説明書や売買契約書を作成するための物件調査の方法を学びました。

現地調査,法令上の制限の有無の調査,生活関連施設の調査等不動産取引の安全を図るためにしなければならないことが非常に多いことを改めて実感いたしました。

今回の研修で学んだことを,今後の相続や債務整理業務に生かせるよう日々精進していきたいと思います。

以上

 

新型コロナウイルス感染症と相続税の申告期限について

もう4月も終わりですね。

東京でのコロナウイルスの問題も深刻化しており,未曽有の不況がきているように感じます。

弁護士として,何かできることはないか考えて行動していきたいと思います。

 

前回は,新型コロナウイルス感染症に関する対応について書いてみましたが,今回は,国税庁が,新型コロナウイルス感染症の影響により,期限までに相続税の申告等が困難な方々のためにFAQを取りまとめているようですのでご紹介いたします。

 

国税庁から,「相続税の申告・納付期限に係る個別指定による期限延長手続に関するFAQ」が公表されております。

この題名で検索していただければ出てくると思います。

 

具体的には,以下の4点について説明がされております。

①相続税申告の個別的な延長が認められる場合

②個別延長が認められた場合の申告期限及び納付期限

③相続税申告に係る各種申請や届出なども個別延長の対象になるか

④個別延長する場合に必要な手続

 

特に上記④について,個別延長する場合には,別途,申請書等を提出する必要はなく,相続税申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記するだけでよいようです。

当初の申告期限以降に,申告書を提出する場合には,新型コロナウイルス感染症の影響による申告期限及び納付期限を延長する旨をこのFAQに記載されている方法で作成するようです。

この場合,申告期限及び納付期限は原則として申告書等の提出日となります。

 

詳細については,相続税申告をされる税務署等に確認されるとよいと思います。

 

みなさま,お体ご自愛ください。

以上

 

 

民事信託・家族信託の可能性について

もう2月も終わりですね。

いよいよ花粉症の時期がやってまいりました。

ニュースを見ていると,東京でのコロナウイルスの問題もかなり身近に迫っているように感じます。

 

さて,前回は,これだけはしておくべき相続の準備について書いてみました。

今回は,民事信託・家族信託について書いてみたいと思います。

 

民事信託や家族信託という言葉を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。

最近では,クローズアップ現代などのテレビでも取り上げられたこともあり,興味をお持ちの方も多いのではないかと思います。

実際にも,民事信託・家族信託についてのご相談が増えてきているなと感じています。

 

弁護士に何かを依頼するとしたらどのような場合だろうかと考えてみてください。

どちらかというと事故や紛争が起きてから,自分ではどうにもできないトラブルが発生したら,という場合に相談するものだというイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。

しかしながら,相続における生前対策の中で特に民事信託や家族信託というのは,何かが起きる前の対策です。

今後高い確率で起きるであろう事象に備えて事前に対策をする,そのために弁護士を利用する。

最近,多くの相続事件に携わるようになって,生前対策の重要性が身に染みて分かるようになってきました。

 

自分が亡くなった場合に備えて,あらかじめ相続の準備をしておくことは,残された相続人のためにも必要です。

自分のご家族と話し合うタイミングというのは,あるようでなかなかないものです。

民事信託や家族信託をきっかけにして,今後のことについて話し合っておくというのもよいと思います。

 

民事信託や家族信託は,成年後見と対比して話題に上がることが多いと思います。

成年後見は,判断能力がなくなってしまったことを公に宣言するものであり,裁判所に申立てをし,弁護士や司法書士が後見人になった場合はその費用もかかります。

後見人が財産管理を行うため,後見人との意思疎通が難しくなる場面もでてくるかもしれません。

 

これに対し,民事信託・家族信託は,そのほとんどが認知症対策として利用されています。

信託契約を結びますので,契約内容に柔軟性を持たせることが可能ですし,遺言や任意後見契約と併用することも可能です。

個人の方で,自ら民事信託・家族信託契約書を組成するのは非常に難しいと思います。

また,遺留分に配慮していない内容にしてしまった場合,自分の意思とは反対に,紛争の原因になってしまうこともあります。

 

このように,上記で述べたような配慮をした上で相続の準備をするためには,民事信託・家族信託契約書の作成について深い知識が必要になることが多いです。

民事信託・家族信託に興味をお持ちの方は,詳しい弁護士にご相談されてみるとよいと思います。

民事信託・家族信託に関して東京で弁護士をお探しの方はこちら

以上

これだけはしておくべき相続の準備

年が明けてもうすぐ2月になってしまいますね。

1月はあっという間でした。

暖冬とはいえ,東京も夜は冬の寒さを感じます。

コロナウイルスはこわいですね。

マスクをするなどして気を付けていきたいところです。

 

さて,前回は,遺留分を生前に放棄してもらうことができるかどうかについて書いてみました。

今回は,これだけはしておくべき相続の準備について書いてみたいと思います。

 

 

相続の準備や相続対策と一概に言われても何をすればよいのか分からないという方は多いのではないでしょうか。

自分が亡くなった場合に備えて,あらかじめ相続の準備をしておくことは,残された相続人のためにも必要です。

日本では,4人に1人が高齢者という高齢社会になっていますが,いわゆる,「終活」などというように,自分の相続に関して準備や対策をする方が増えているように感じます

まず,準備に当たって,相続税の対策のための財産の把握や整理,遺産分割協議をもめないようにするという視点をもつとよいと思います。

そのためには,まず,自分の財産の把握をすることが重要です。

現時点で,不動産,預貯金・現金,株式,投資信託,生命保険金等,自分がどのくらいの財産を持っているか調査してみてください。

財産が把握できたら,誰に,何を,どのくらいあげるか検討してみるとよいでしょう。

 

次に,相続について準備・対策をする上で必要なのは,遺言書の作成です。

遺言書を作成しないまま亡くなった場合,相続人間で,亡くなった方の財産を分割するための話し合いをしなければなりません。

この話し合いの過程で,相続人間で争いが生じるおそれがあります。

亡くなった方の全ての財産について,それぞれ誰に何をどれくらい相続されるかを遺言書で定めておくことで,相続人間で話し合う必要がなくなり,争いを避けることができます。

また,相続財産の中に不動産がある場合には,遺言書で相続する方を定めておけば,その不動産の名義変更をする際にも遺言書によってスムーズに名義変更の手続を進めることができます。

遺言書を作成するということには,たとえ各相続人に法定相続分どおりで相続させるという内容であっても,相続人間での紛争を回避することや相続税申告上のメリットがあります。

もっとも,その記載内容に誤りがあった場合や遺留分に配慮していない内容にしてしまった場合,自分の意思とは反対に,紛争の原因になってしまうこともあります。

また,相続税について,支払う額をできるだけ抑える工夫や相続人が相続税を支払う原資を用意しておくなどの配慮をしておけば,相続人はより有利で安心して相続をすることができます。

このように,上記で述べたような配慮をした上で相続の準備をするためには,相続や遺言書の作成について深い知識が必要になることが多いです。

 

以上ご説明してきたように,相続対策は複雑であり,多岐にわたっています。

相続に関する手続に不安をお持ちの方は,相続に詳しい弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。

以上

遺留分の生前放棄

もう12月も終わりますね。

今年もあっという間に終わってしまいました。

東京も冬の寒さを感じます。

インフルエンザが流行っているようですので,気を付けていきたいところです。

 

さて,前回は,相続における香典や弔慰金の扱いについて書いてみました。

今回は,遺留分を生前に放棄してもらうことができるかどうかについて書いてみたいと思います。

 

遺留分とは,相続人のうちの一部の方について,相続財産のうち一定の割合を認めるものです。

遺留分は,これまで被相続人の財産を頼りにして生活していた遺族に対する生活保障と,被相続人の財産形成に貢献した遺族には潜在的持分があるという考えから認められています。

 

このように,遺留分は,相続人に一定の割合を認めるものですが,相続人なら誰でも認められているものではありません。

遺留分を有する方は,兄弟姉妹以外の相続人です。

具体的には,子(その代襲相続人を含む),直系尊属(父母,祖父母等),配偶者です。

ただし,相続欠格,廃除,相続放棄により相続権を失った者には遺留分はありません。

相続開始時点で胎児だった子は,生きて生まれてきた場合には,子として遺留分減殺請求もしくは遺留分侵害額請求をすることができます。

兄弟姉妹には遺留分はないことに,特に注意が必要です。

 

遺留分の割合は,以下のように定められています。

① 配偶者だけが相続人であるときは,2分の1

② 直系卑属だけが相続人であるときは,2分の1

③ 配偶者と直系卑属が相続人であるときは,2分の1

④ 直系尊属だけが相続人であるときは,3分の1

⑤ 直系尊属と配偶者が相続人であるときは,2分の1

⑥ 配偶者と兄弟姉妹が相続人であるときは,配偶者は2分の1,兄弟姉妹には遺留分がない

 

実際に,それぞれの遺留分減殺請求権者もしくは遺留分侵害額請求権者が取得する遺留分は,上記の遺留分の割合に,それぞれの相続人の相続分を掛けたものとなります。

例えば,配偶者と子ども3人が遺留分減殺請求権者である場合では,

① 配偶者の相続分は,2分の1

② 子ども一人ひとりの相続分は,6分の1

となります。

よって,それぞれの相続人の遺留分は,

① 配偶者 2分の1×2分の1=4分の1

② 子ども一人ひとりの相続分 2分の1×6分の1=12分の1

となります。

 

相続人に一定の割合で認められる遺留分を放棄することを遺留分放棄といいます。

通常,遺留分放棄は,法定相続分どおりに均等に相続することによって,農業や自営業の方の資産が細分化されるのを防ぐなど,相続財産の多くを事業の後継者に残す必要があるため,事前に遺留分を放棄することが認められています。

もっとも,遺留分放棄は,放棄するタイミングの違い,すなわち,相続開始前か相続開始後かで手続が変わってきます。

 

 

被相続人の生前に遺留分放棄をする場合には,被相続人となる方の住所地を管轄する家庭裁判所に,遺留分の放棄についての許可審判の申立てをし,家庭裁判所の許可が必要となります。

家庭裁判所の許可が必要な理由としては,仮に無制限に遺留分放棄を認めると,被相続人が威圧したり脅すなどして遺留分権利者に放棄を強要し,本人は放棄したくないと思っているのに,無理やり放棄させられる可能性があることから,これを防止するためになります。

 

家庭裁判所は,①遺留分の放棄が本人の自由意思に基づくものであるかどうか,②遺留分放棄に合理的な理由と必要性があるかどうか,③遺留分放棄と引き換えの代償の有無などを考慮して遺留分放棄を許可するかどうかを判断し,相当と認めるときは,許可の審判をします。

許可された事例としては,

① 死後に遺産争いが起きることを懸念して,婚外子に財産を贈与する代わりに遺留分を放棄させる場合

② 高齢な親を扶養するために,その親と同居する子以外が遺留分を放棄する場合

などがあります。

 

相続開始後は,自由に遺留分を放棄することができます。

生前の遺留分放棄と異なり,家庭裁判所の許可は不要です。

遺留分放棄の意思表示は,遺留分減殺請求の相手方に対してするとよいでしょう。

 

以上のとおり,遺留分を生前に放棄する場合は,家庭裁判所に許可の審判を申し立てる必要があります。

各ご家庭の事情によって主張する内容や提出する書類は変わってきます。

相続に関する手続に不安をお持ちの方は,相続に詳しい弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。

以上

相続における香典や弔慰金の扱いについて

もう11月も終わりますね。

北海道は吹雪いているところもあるようですが,東京もぐっと寒くなってきました。

風邪が流行っているようですので,体を冷やさないように気を付けたいところです。

 

さて,前回は,農地を相続する場合の注意点について書いてみました。

今回は,相続における香典や弔慰金の扱いについて書いてみたいと思います。

亡くなられた方のお通夜や葬儀で参列者からいただく香典や,亡くなられた方の勤務先からいただいた弔慰金は相続財産に当たるのでしょうか。

相続財産に当たるのであれば,遺贈や遺産分割の対象になりますし,相続税の課税対象にもなるため問題となります。

 

【香典について】

香典とは,故人の霊前に供える金品のことをいい,お香や花の代わりとしたものをいいます。

急な不幸で出費があることへの,ご親族等への助け合いの意味も込められています。

 

香典は,お通夜や葬儀の参列者から遺族への贈与と考えられています。

被相続人が生前に有していた財産ではないため,相続財産には当たらず,また,相続税の課税対象にも当たりません。

もっとも,香典の金額が社会通念上考えられないような高額な場合は,贈与税の課税対象になる可能性があります。

なお,お通夜や葬儀費用は,相続税を計算する際に控除されますが,香典返しにかかった費用は相続税の計算において控除されません。

 

【弔慰金について】

弔慰金とは,死者を弔い,遺族を慰める気持ちを表すために贈る金銭をいいます。

香典とは異なり宗教的な意味合いはないため,葬儀以外の場で送られることが多いと思われます。

一般的には,個人が送るものではなく,公的機関や企業が贈るものです。

 

弔慰金も被相続人が生前に有していた財産ではないため,相続財産には当たりません。

したがって,相続税の問題は原則生じないことになります。

しかし,弔慰金が高額になる場合には,死亡退職金と同様に,みなし相続財産とされ,相続税が課される可能性があります。

 

弔慰金がみなし相続財産に当たる場合としては,以下の2つのパターンがあります。

①被相続人が業務上死亡した場合,被相続人の死亡当時の給与の3年分に相当する金額を超える弔慰金が贈られた場合は,この弔慰金はみなし相続財産に当たります。

②被相続人が業務上死亡した場合以外の場合,被相続人の死亡当時の給与の半年分に相当する金額を超える弔慰金が贈られた場合は,みなし相続財産とみなされます。

 

以上のとおり,香典や弔慰金は,原則として相続財産には当たりません。

しかし,弔慰金のように金額の大きさによっては,みなし相続財産とされ相続税が課税される場合があります。

何が相続財産に当たり,何が当たらないのか,相続税が課税される可能性のあるものは何があるのかなどについては,相続に詳しい弁護士に相談するなどして,押さえておいた方がよいと思われます。

農地を相続する場合の注意点

もう10月も終わりますね。

台風被害に遭われた方々には,心よりお見舞い申しあげます。

さて,前回は,「相続させる」旨の遺言と相続法改正について書いてみました。

今回は,農地を相続する場合の注意点について書いてみたいと思います。

 

1 農地を相続する際の手続

⑴ 農業委員会への届出

土地を相続した場合,法務局で相続登記をする必要がありますが,農地を相続した場合は,相続登記に加えて農業委員会へ届け出る必要があります。

⑵ 農業委員会への届出の期限

相続登記には期限はありませんが,農業委員会への届出は相続を知った ときから10か月以内にしなければなりません。

期限内に届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は,10万円以下の過料が科されることがあります。

 

2 農地を売却するときの手続

相続人のうち誰かが農業を引き継ぐ場合は,農地を相続すればよいのですが,相続人の全員が農業を引き継ぐ意思がない場合,農地を売却することを検討する必要があります。

もっとも,農地は食料の生産に欠かせないものであることから,農地法によって,農地の売却は制限されています。

以下,農地の売却方法について説明します。

⑴ 農地のまま農家に売却する場合

農地を農地のまま売却する場合は,農業委員会の許可が必要です。

この場合の許可は,農地法第3条に基づく許可となります。

許可が下りるためには,買主が農業経営に関わるといった一定の要件を満たすことが必要です。

具体的には,土地の買主が農家であるか,もしくはこれから農業に参入しようとしていることが要件として定められています。

⑵ 農地以外に用途変更して売却する場合

ア 農地を宅地等農地以外に用途変更して売却する場合も,農業員会の許可が必要になります。

この場合の許可は,農地法第5条に基づく許可になります。

許可が下りるかどうかの判断基準としては,立地基準と一般基準があります。

農業委員会は,これらの基準に基づいて許可をするかどうか判断することになります。

イ 農業委員会の許可が下りて用途変更が認められたとしても,宅地としての利便性の有無により,買い手がつかないことなども考えられますので,用途変更をする際に検討しておく必要があります。

 

3 農地を相続放棄する場合

⑴ 相続人全員が農業を引き継ぐ意思がない場合は,相続人全員で相続放棄をすることも考えられます。

相続放棄をする場合は,相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません。

相続放棄をすると,相続人でなかったことになりますので,農地以外の遺産も受け取ることができなくなりますので,注意が必要です。

⑵ 相続人全員が相続放棄をすると,相続人がいないことになります。

この場合であっても,家庭裁判所が相続財産管理人を選任するまでは,相  続人であった者が農地を含めた遺産の管理をする義務があります。

相続財産管理人には遺産の中から報酬を支払う必要があります。

 

4 さいごに

農地を相続する場合は,さまざまな注意点があります。

生前から農地相続に詳しい弁護士に相談するなどして,相続を円滑にできるよう準備しておきたいものです。

以上

「相続させる」旨の遺言と相続法改正について

もう9月も終わりますね。

東京もだいぶ涼しくなって過ごしやすくなってきました。

 

さて,前回は,後見制度支援預金について書いてみました。

今回は,「相続させる」旨の遺言と相続法改正について書いてみたいと思います。

 

「相続させる」旨の遺言とは,「特定の遺産を,特定の相続人に,相続させる。」という内容の遺言のことをいいます。

その法的効果について,最高裁判所は,平成3年4月19日の判決で,「相続させる」旨の遺言について,権利移転効を伴う遺産分割方法の指定と解する判断を示しました。

この判例のポイントは以下のとおりです。

① 遺言者の意思は,遺言書に記載された遺産を,他の共同相続人とともにではなく,特定の相続人に単独で相続により承継させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な解釈である。

② 遺言書の記載から,その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り,遺贈と解すべきではない。

③ 「相続させる」趣旨の遺言は,民法908条にいう被相続人が遺産の分割の方法を定めた趣旨である。

④ したがって,他の共同相続人もこの遺言に拘束され,これと異なる遺産分割の協議や審判もなし得ない。

⑤ このような遺言にあっては,遺言者の意思に合致するものとして,特定の遺産を特定の相続人に帰属させる遺産の分割がなされたのと同様の承継関係が成立するので,原則として,何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時(遺言の効力が生じた時)に直ちに特定の遺産が特定の相続人に相続により承継される。

⑥ 結果として,当該遺産については,遺産分割協議又は審判を経る余地はない。

⑦ このような場合であっても,特定の相続人は相続の放棄の自由を有し,他の相続人の遺留分減殺請求権の行使を妨げない。

 

この判決により,以下のことがいえることになります。

① 相続させる遺言があれば,遺産分割の協議や家庭裁判所の審判を経ないで,指定された相続人が遺産を確定的に取得する。

② 相続させる遺言については,指定された相続人が単独で相続登記を申請すべきものとされる。

「相続させる」旨の遺言のメリットとしては,①登記手続が簡便であること,②農地法3条所定の許可が不要であること,③賃貸人の承諾が不要であることが挙げられます。

 

改正前の民法では,「相続させる」旨の遺言に基づいて相続した財産については,登記などの対抗要件を備えなくとも,第三者に対して権利を主張することができました。

「相続させる」旨の遺言は,原則として,特定の遺産が特定の相続人に相続により承継され,法定相続分を超える場合には相続分の指定を伴うのであるから,法定相続分及び指定相続分による権利の取得について,登記しなくても第三者に対抗することができる以上,「相続させる」旨の遺言による権利の取得についても登記せずとも第三者に対抗することができるというわけです。

つまり,「相続させる」旨の遺言によって財産を取得する場合も同様に,「相続」による権利の承継の一種として,不動産についての権利を主張するために登記は不要とされてきました。

 

他方,改正法により,「相続させる」旨の遺言で相続した財産について,法定相続分を超える権利の承継があったとき,対抗要件が必要となりました。

対抗要件とは,第三者に対し,財産についての権利を主張するために具備しなければならない手続をいいます。

対抗要件の具体例としては,不動産の場合は登記,自動車の場合は登録,債権の場合は債務者への通知等,動産の場合は引渡など様々です。

このように,「相続させる」旨の遺言によって財産を取得した場合は,できるだけ早めに,不動産であれば登記申請,預貯金債権であれば金融機関での手続をすることをおすすめいたします。

 

どのタイミングで登記をすべきかなど不安な点もあると思いますので,相続に詳しい弁護士に相談するとよいと思います。

相続について東京で弁護士をお探しの方はこちら

金融機関での相続手続について

2019年も半分が終わってしまいましたね。

今年もあっという間に残り半分になってしまいました。

東京は梅雨でむしむししますね。

体調には気を付けていきたいところです。

 

さて,前回は,相続法改正と特別寄与制度の創設について書いてみました。

今回は,金融機関での相続手続で必要になる書類について書いてみたいと思います。

 

まず,相続が発生した場合,被相続人名義の口座がある金融機関に被相続人が死亡したことの届出が必要です。

死亡したことの届出をしないと,原則として口座は凍結されません。

他の相続人が勝手に引き出すおそれがある場合,これを防止するために速やかに届出をしたほうがよいと思われます。

死亡したことの届出と併せて残高証明書の発行を依頼すると,二度手間にならずよいと思います。

また,被相続人が死亡したことの届出をすると,口座が凍結されるため,公共料金等の引き落としができなくなるので,先に引き落とし口座を変えておいた方がよいと思います。

 

届け出た際,金融機関から相続届の書式を受け取ります。

相続届には,原則として,相続人全員の署名・押印が必要です。

相続届の添付書類としては,被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本,相続人の戸籍謄本,相続人の印鑑登録証明書が必要です。

 

相続届を提出した後は,金融機関にもよりますが,約2週間から3週間ほどで入金がされることが多いです。

受取方法としては,相続人代表者が全額を一括して受け取る方法や,各相続人に金額を指定して振り込んでもらう方法もあります。

 

相続手続についてお悩みの方は,相続に詳しい弁護士に相談するとよいと思います。

東京で相続についてお悩みの方はこちら

相続法改正 特別寄与制度の創設

元号が令和に変わってもう1か月が経とうとしています。

時間は本当にあっという間に過ぎていきますね。

東京は夏日が多くなってきましたね。

さて,前回は相続法改正と遺留分について書いてみました。

今回は,相続法改正と特別寄与制度の創設について書いてみたいと思います。

 

今回の相続法改正によって,特別寄与制度が創設されました。

施行日は,今年の7月1日となっています。

 

被相続人の子どもの配偶者のように,相続人ではない親族が被相続人の介護や看病をするケースが多くあると思います。

場合によっては,常時介護が必要なこともあり,お仕事をしながら介護をしている方もいらっしゃると思います。

改正前だと,相続人ではないことから遺産の分配を受けることができず,不公平であるとの指摘がありました。

しかしながら,今回の改正では,このような不公平を解消するために,相続人ではない親族でも,無償で被相続人の介護や看病をするなどの貢献をし,被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には,相続人に対し,金銭の請求をすることができるようになりました。

 

施行後,特別寄与料を請求する事件が増えるかどうかはまだ分かりませんが,気になる方やお悩みの方は相続に詳しい弁護士に相談するとよいと思います。

遺留分の計算方法が変わります。

新元号は令和になりましたね。

5月から令和になるので,間違わないように注意したいと思います。

東京は暑く感じる日も多くなってきましたね。

さて,前回は成年後見制度について書いてみました。

今回は,相続法改正と遺留分について書いてみたいと思います。

 

平成30年に民法の相続に関する法律が大きく改正されました。

約40年ぶりの民法大改正になります。

改正された項目は複数あり,平成31年から順次施行されていくことになります。

この改正のポイントはいくつかありますが,今回は遺留分制度に関する見直しについてご説明します。

 

1 遺留分について

遺留分とは,相続人のうちの一部の方について,相続財産のうち一定の割合を認めるものです。

兄弟姉妹を除く法定相続人は,遺留分減殺請求できる場合がありますが,この遺留分減殺請求ができる期間は法律によって決められています。

 

2 遺留分侵害額の算定方法について

改正民法では,遺留分を算定するための財産の価額は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に,その贈与財産の価額を加算し,その合計額から債務の全額を控除して算出します。

なお,贈与財産の価額には,遺贈は含みません。

 

改正民法では,遺留分を算定するための財産の価額に算入する生前贈与の範囲等について見直しをしています。

また,相続人に対する生前贈与の範囲に関する規定の見直しもなされました。

 

現行民法によれば,遺留分の計算上算入される贈与は,①相続開始前の1年間にしたものと,②当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与は,特段の事情がない限り全ての期間の贈与が算入されます。

また,現行民法における特別受益の扱いは,1年以上前の贈与も含めて原則として全て加算されます。

特別受益とは,被相続人の生前に,共同相続人の中の一人が婚姻,養子縁組のためや生計の資本として受けた贈与のことをいいます。

 

他方,改正法では,相続人に対する贈与は,特別受益に該当する贈与で,かつ,原則として相続開始前の10年間にされたものに限り,遺留分を算定するための財産の価額に算入することになりました。

ただし,遺留侵害額を求める計算式においては,遺留分権利者の特別受益の額を相続開始前の10年間にされたものに限定せず,加算することになりました。

 

3 遺留分に関する規定の施行日

遺留分に関する規定の施行日は,平成31年7月1日です。

4 さいごに

以上のように,相続に関する法改正があったことにより,遺留分の計算方法についても様々な影響が生じます。

そのため,相続案件に集中的に取り組み,遺留分制度に詳しい弁護士に相談するのがよいと思います。