慰謝料の増額事由について

交通事故後に加害者から謝罪がなかったり、相手方保険会社の対応に不満があること等を理由に、慰謝料の増額ができないか、というご相談を受けることが良くあります。

慰謝料の計算は、実務上、損害賠償額算定基準(通称赤本)の別表Ⅰ、Ⅱという基準に基づいてされます。

例えば、むちうちで3か月通院した場合、別表Ⅱによれば、慰謝料は53万円となります。

ただし、「加害者に故意もしくは重過失(無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらに信号無視、薬物等の影響で正常な運転ができない状態で運転等)または著しく不誠実な態度等がある場合」には、増額が認められています。

裁判例では、加害者が一方的かつ重大な過失によって被害者を死亡させたにもかかわらず事故後逃走を続け、逮捕後も完全黙秘し、刑事裁判でも事故は被害者の速度違反によるものであるなどと述べ、被害弁償を全くせず、謝罪の言葉すら述べなかった事案につき、増額を認めたものがあります(東京地判平成15・5・12、交民36・3・697)。

実務上、加害者側にここまでの問題があるケースは多くはなく、単に謝罪がなかったり、相手方保険会社の対応が良くなかったというだけでは、なかなか慰謝料の増額事由とはなりません。

慰謝料の増額を求めるのであれば、加害者側の不誠実な態度等について、しっかりと主張・立証する必要があります。

交通事故でお困りの方は、弁護士にご相談することをお勧めします。