不動産譲渡所得③

前回の続きで,不動産譲渡所得のお話です。

前回は,取得費としてどのようなものが引けるのか,お話をしましたが今回は,取得費とは別に,不動産譲渡所得から差し引ける

「特別控除」について説明します。

取得費は,「儲かった額」を算出するために取得にかかった費用を差し引くという話でしたが,特別控除とは儲かった額の算出とは

関係なく,政策上の配慮等から定められているものです。

 

例えば,①公共事業等のために土地建物を売った場合には,5000万円の特別控除が受けられますし,②マイホームを売った場合には,

3000万円の特別控除が受けられます。東京の都市部は別とすれば,3000万円という金額は,マイホーム売却額のかなりの割合を占めること

が多いですので,マイホームの売却の際は税金はとても安くなることになります。

さらに,③特定土地区画整理事業等で土地を売った場合には2000万円,④特定住宅地醸成事業等のために土地を売った場合には1000万円,

⑤農地保有の合理化のために土地を売却した場合には800万円の特別控除を受けることができます。

①③④⑤の特例は,公共事業等に協力しており,公共の利益のための不動産売却につき,税額を軽減するものです。

 

②のマイホーム特例は,なぜ定められているのでしょうか。

この制度は,マイホームの売却に高い税金がかかると,売却に消極的になり,中古不動産の流通阻害や,空き家が増加してしまう等の

問題が生じることから,定められている制度です。

このような制度の目的から,マイホームの売却として特例を受けるためには,⑴現在主として住んでいる自宅であり⑵居住しなくなってから3年を

経過する日の年末までに売却し⑶家屋を壊した場合には,家屋を壊してから1年以内にその敷地の売却の契約が締結されていること⑷単身赴任の場

合には,配偶者等が居住していること等の条件が定められているので,注意が必要です。

さらに,マイホーム売却を阻害させないために,10年を超えて所有した場合の軽減税率の特例をも併用できる場合があります。

マイホームの売却の際には,これらの要件を満たしているか否かを含め,よく税理士に相談することが必要です。

 

少し変わった特別控除の政策として,平成21年1月1日から平成22年12月31日までに取得した不動産の売却の際に,その年の1月1日にお

いて所有期間が5年を超える不動産を売却した場合には,1000万円の特別控除が受けられるというものがあります。

これは,リーマンショック直後という時代背景のもと,資産デフレ脱却等を目的として定められた不動産流通促進策です。

不動産譲渡所得税②

前回の続きで,相続で引き継いだ不動産を売却した場合の,不動産譲渡所得税の注意点についてお話します。

不動産譲渡所得税は,売却した金額自体にかかるのではなく,不動産を売却した金額から,当該不動産を入手した際の費用など(これを

取得費といいます)を差っ引いた金額にかかります。

要するに,不動産を売ったことで儲かった金額についてだけ,課税がされるという仕組みなのです。

取得費には,①土地を購入する時に収めた不動産取得税や登録免許税②立退料③土地の埋め立てや土盛り等にかかった費用④測量費

⑤購入してすぐに建物を取り壊した場合の取り壊し費用⑥土地などを購入するために借り入れたお金の利子のうち,土地などを実際に使用開始

する日までの利息等,不動産の取得に関して支払った費用が広く含まれますので,これらの金額がいくらであったのかをしっかりと説明できる資料

が準備できるかどうかが,正確な申告,ひいては節税につながることになります。

また,これらの取得費用が不明である場合には,取得費を売却額の5%とすることができますが,5%は非常に低い割合ですので,地価が二束三文

であった大昔に買った土地でもない限りは,きっちりと,取得費に関する資料を揃えた方が良いということになります。

資料を探しても見つからないという場合にも,まだあきらめる必要はありません。

合理的な手法により,取得時点での不動産の価額を推測することは認められており,例えば,建物を着工建築物構造別単価,土地を市街地価格指数

で算定することが認められた例もありますので,詳しい税理士へ相談することが重要です。

不動産譲渡所得税①

本日から数回は,相続で引き継いだ不動産を売却した場合にかかる税金の話をしようと思います。

相続で一定以上の財産を引き継いだ場合には,相続税がかかりますが,相続で引き継いだ不動産を売却した場合には,

相続税とは別に,譲渡所得税がかかることに注意が必要です。

不動産譲渡所得税は,不動産を売って利益が出たときに支払う税金です。

不動産を取得してから,売却するまでの期間が長い場合(5年をこえる場合)の税率は15%(住民税5%)で,売却するまでの期間

が短い場合(5年以下の場合)の税率は30%(住民税9%)です。

相続で引き継いだ不動産を売る場合には,亡くなられた方が不動産を取得した時点から,売却するまでにどれだけ期間が経っているかで

計算をしますので,ほとんどの場合が,長期譲渡所得の課税がされることになります。

平成25年から平成49年までは,復興特別所得税として,上記計算による所得税額の2.1%を支払う必要があります。

申告期限は,不動産を売却した年の翌年の3月15日までです。

相続税は意識していても,不動産譲渡所得税のことまで意識がまわらないことがありますし,不動産譲渡所得税は,翌年の住民税にも影響をあたえ

ますので,意識をしていないと,思わぬ高額の住民税に驚くことになってしまいますので,注意が必要です。

 

公正証書遺言作成に必要なもの

例年,12月はあっという間に過ぎてしまいます。

特に,弁護士業界は,12月半ばに新人弁護士の一斉登録が行われますので,新しい職場の仲間が増え,歓迎会や指導等をしているうちに,

いつのまにか年末になってしまいます。

今年一年も充実して過ごせたことに感謝し,来年に繋げていきたいと思います。

本日は公正証書遺言の必要書類のお話をします。

公正証書遺言の作成のためには,大きく分けて,本人確認関係資料と,財産関係資料があります。

①本人確認関係資料

公正証書遺言を作成する際には,本人確認のうえ,実印を押しますので,身分証明書のほか,印鑑証明書と実印が必要となります。

そして,遺言により遺産を受け取る者と,遺言者との関係を示すため,戸籍謄本の取得も必要です(相続人ではない方へ遺贈する場合には,

その方の住民票が必要です)。

また,公正証書遺言の作成には,証人が2人必要なので,証人2人の名前、住所、生年月日及び職業が分かるものが必要です。

②財産関係資料

遺言書の内容に不動産が入る場合には,不動産の登記事項証明書が必要です。

また,公証役場に支払う手数料は,現時点での財産総額で決まりますので,固定資産税評価証明書や,預貯金通帳の写し等,

ある程度,資産額が分かる資料が必要です(正確に資産額を算出する必要まではありません)。

 

公正証書遺言を作成する際には,これらの資料を前もって準備しておくと,スムーズです。

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年末へ向けて

おはようございます,弁護士法人心,東京駅法律事務所の岩崎です。

今年は東京で,「木枯らし一号」が観測されなかったそうです。

観測されない ということもあるのですね。

調べてみたところ,「木枯らし一号」は,10月半ばから11月末までの間で,冬型の気圧配置で西北西から北の風,最大風速8メートル以上の風を

観測すると発表されるそうで,東京で「木枯らし一号」が観測されなかったのは,39年ぶり(1951年以降5度目の出来事)だそうです。

今年は,北日本で観測史上最も遅い初雪を観測する等,冬型の気圧配置になること自体が少ないですので,その影響かもしれませんね。

 

さて,弁護士の業界では,司法研修所での研修を終えて弁護士となるのが12月ですので,12月が1つの大きな区切りです。

今年も,東京駅法律事務所に新しい弁護士が増えますし,相続チームに所属する後輩の弁護士も増える予定ですので,とても楽しみにしています。

例年あっという間に過ぎ去る12月ですが,今年は後輩指導という役割もありますし,新年1月に開設予定の税理士法人心東京駅税理士事務所の開業準備もありますので,今年は特にあっという間に過ぎ去ってしまいそうです。

1日1日を大切に,12月を過ごしたいと思います。

 

 

相続税がかかる人,かからない人

本日は,相続税の申告義務の範囲について,記載をします。

相続税は,以前は5000万円+相続人の数×1000万円でしたが,平成27年1月1日に発生した相続以降は,3000万円+相続人の数×600万円となっており,大きく相続税のかかる方の範囲が広がりました。

平成26年の相続税の申告者は約5万6000人でしたが,平成27年は約10万3000人,平成28年は約10万6000人となっており,法改正を機に相続税申告義務がある方の人数はほぼ倍増しています。

現在では,上述したとおり,遺産が「3000万円+相続人の数×600万円」を超える場合に,相続税の申告義務が生じるわけですが,土地や建物について,どのように評価するかが次に問題になります。

この点,土地については「相続税路線価」を基準とし,建物については「固定資産税評価額」を基準とすることになります。

特に注意をしなければならないのは,小規模宅地の特例や,配偶者控除といった,相続税申告に利用できる制度を利用すると相続税額が0円になる場合であっても,遺産の額が3000万円+相続人の数×600万円以上であれば,申告が必要であるということです。

法改正後の現在では,預貯金がそこまで大きな金額ではなくても,持ち家が一定程度の金額で評価される場合には,申告が必要な方が多くなっています。

ご自身に相続税の支払い義務があるのかないのか,ご不安な方は,相続税の申告期限は相続が発生してから10か月以内と,とても短いですので,お早めに相続に詳しい弁護士,税理士にご相談ください。

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遺言書に関する民法改正その2

前回に引き続き,遺言書に関する民法改正とその影響についてお話したいと思います。

2 自筆証書の保管制度の創設について

⑴ 保管制度の概要

現行民法において,自筆証書遺言を第三者が保管する制度は,特に定められていませんでしたが,

法務局において保管する制度が創設されます。

そして,法務局において保管する制度を利用した場合には,検認手続が不要とされます。

⑵ 保管制度の実務的影響

個人的には,前回のブログで紹介した,目録を自筆以外で作成できるようになる改正よりも実務的に意義の大きい制度だと思います。

まず,法務局が保管をしてくれることは,遺言書を紛失したり,親族等により偽造,変造されてしまうという自筆証書遺言の欠点がなくなりますので,とても大きな改正です。

また,検認手続が不要となることについても,実務的に大きな影響があります。

検認とは,遺言を遺した人が亡くなった後,自筆証書遺言が見つかった場合に行わなければならない手続で,家庭裁判所に申し立てをして,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。

検認手続は,被相続人の戸籍謄本類及び相続関係を示す戸籍謄本類一式を裁判所に提出するのですが,これらの資料の収集には,ケースによっては1か月以上かかりますし,裁判所に申し立てした後,裁判所から指定される実際に検認をする期日は,申し立てから1か月以上先の期日を指定されることも多くありますので,資料の収集を開始してから検認が終了するまで2,3か月かかってしまうことが多いです。

そして,検認が終わらないと,遺言の執行はできませんので,遺言書が残されている場合であっても,実際に遺言書の内容を実現するまでには,だいぶ時間がかかってしまいます。

このように,検認手続には時間がかかることから,遺言を迅速に執行するという点で,従来は検認手続が不要な公正証書遺言が優位だったのですが,今回の改正により,自筆証書遺言を作成して法務局で保管をしてもらうという方法により,自筆証書遺言においても迅速な執行が可能になることになります。

もちろん,遺言執行者を弁護士等の専門家にしておき,亡くなったことをすぐに専門家に知らせるように親族に伝えておく等の準備は必要ですし,法務局は遺言の内容をチェックしてくれるわけではありませんので,遺言の作成から専門家に関与してもらうのが安心です。

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遺言書に関する民法改正その1

なかなか晴れ間の出ない秋になってしまっていますね。

皆さまいかがお過ごしでしょうか。

今回と次回は遺言書に関する民法改正と,その影響についてお話したいと思います。

1 まず①自筆証書遺言の方式が緩和されます。

⑴ 緩和の内容

現行民法968条1項は,自筆で遺言を作成する場合には,全文を「自筆」で作成することを定めています。「全て長男に相続させる」等のシンプルな遺言であれば問題になりませんが,不動産の所在や,預金口座を特定する場合には,相続する財産の特定に関する事項全てを自筆しなければならないことが,遺言作成者の負担になるといわれていました。

今回の改正により,「前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。」

という規定が加わります。

すなわち,相続財産に関する目録については,パソコン等を使って活字で作成して良いことになります(目録の各ページに署名捺印は必要です)。

⑵ 緩和の影響

これまで,財産の目録も全て自筆で書かなくてはならなかったのが,目録をパソコンで作成できるというのは,かなり大きいと思います。

パソコンを気軽に使える世代は,自筆で遺言を作成する方が,一定程度増えると思います。

しかしながら,①比較的高齢な世代等,将来,遺言能力が争われる可能性がある方は,従前のとおり,公正証書の方が安心です(この世代の方は,手書きの方が馴染み深く,パソコンで作成できること自体にメリットを感じない可能性もありますね)。

②また,パソコンで作成可能といっても,不動産や預貯金,証券口座を多数所有している場合には,エクセル等で作成し,各ページに署名捺印をするのはやはり手間です。専門家に丸ごと依頼できる公正証書遺言の作成の需要は相変わらず多いと思います。

③公正証書とは違って,第三者が遺言の内容を確認するような制度ではないので,各目録への署名捺印忘れや,不動産等の地番の表記ミス等で無効な内容の自筆証書遺言が作成されてしまう可能性は,現行の民法と同様に起こり得ます。自筆証書遺言を作成される場合であっても,法的に問題がないか,目録の内容にミスがないか等を弁護士等の専門家に相談をしておくと安心です。

 

次回は,自筆証書遺言の保管制度の創設についてお話します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遺産分割の話合いはいつから行うべき?

弁護士法人心,東京駅法律事務所の岩崎です。

とても暑い日が続いていますが体調を崩されたりはしていないでしょうか。

本日は,「遺産分割はいつから行うべきか」について書きたいと思います。

 

遺産分割協議はいつから行うべきでしょうか?

49日まではそのような財産の話をするのは故人に申し訳ない というお考えの方も多いと思います。

たしかに,遺産分割自体に時効はありませんし,それほど急ぐ必要はないという考え方はあります。

しかしながら,相続税の支払いをしなければならないケースは,亡くなってから10か月以内に相続税

の納付をしなければならないので,相続の開始前にある程度の話ができている等の事情がない場合

には,49日より前からお話し合いを始めた方が良いと思います。

相続税の納付に遺産を使おうと思っている場合には,遺産分割協議書を使わないと凍結された口座

からお金を下ろせないですし,不動産を売却しようと思っていいる場合には,不動産の測量,境界の

画定,分筆,相続登記,買主の選定等,とても時間のかかる手続きが必要だからです。

特に,不動産の売却には時間がかかりますので,49日まで放っておいては,まず間に合いません

し,亡くなられた直後から準備をしても,余裕はありません。

可能であれば,測量や境界の画定や分筆等の売却準備は,生前に行っておくことがおすすめです。

 

 

 

納税資金をどうするか

弁護士法人心,東京駅法律事務所の岩崎です。観測史上最速の梅雨明けとなりました。
私は暑さにやられそうですが,皆さまはお元気でしょうか。

相続税をどうやって納めるか という納税資金の捻出につきお話をします。

日本において,遺産の割合の多くを不動産が占めているケースはめずらしくありません。
相続税の支払いを,不動産の一部を処分することで行おうとする方もかなりいらっしゃると思います。特に東京近郊等,地価が高いところでは,相続税が高くなりやすく,不動産の処分が必要になることが多いです。

ここで問題なのは,原則として,相続税の納付期限は相続発生後から10か月と,非常に短いことです。

売却する不動産を選定し,境界の画定や分筆,測量を行い,相続登記をし,売却先を探し,契約する・・という一連の作業を,10か月以内に行うのは,相当にタイトなスケジュールです。

49日までは遺産の分割や納税の話をしない方が良いと考える方もおり,お気持ちは十分に理解できるのですが,手続き的には,49日を終えてから納税資金の捻出を検討するのは,遅すぎます。

相続税の納税資金を捻出する必要性がある場合には,相続発生後ではなく,生前に,納税資金を踏まえた生命保険に加入する,境界の画定や分筆,測量までは済ませておく等の対策をしておくことで,相続発生後にあわてずに済みます。

特に,境界の画定,測量等については,相続発生後のギリギリのスケジュールの中で行う場合には,画定や測量の手数料,周辺の住民との折衝において,足元を見られてしまうケースもままあります。

時間に余裕のある生前に対策をしておくことは,様々な観点からメリットが大きいのです。

遺言書作成の重要性

最近暑くなってきましたね。この時期は,急な暑さに対応できず,熱中症になりやすいようなので,皆さまもお気を付けください。

本日は遺言作成の重要性についてお話をします。

遺言書がない場合には,原則として法定相続分に従って分けるということになりますが,不動産を売却するのか,誰かが引き継いで代償金を支払うのか等の分け方で揉めたり,被相続人の財産形成に特別の貢献をした(寄与分)とか,生前に一部の相続人が特別の利益を得ていた(特別受益)等の具体的相続割合で揉めたり,様々な事情でなかなか分割ができなくなることがあります。

自分には遺産が多くないから揉めないとお考えの方もいらっしゃいますが,実際には遺産が5000万円以下のケースが紛争の大半を占めています。

遺産分割で揉めてしまうと,ケースによっては,何年,何十年と分割することができず,紛争が次世代にまで引き継がれてしまうこともめずらしくありません。

特に近年,人々の権利意識が強くなってきており,裁判所に提起される遺産分割事件数は年々増加しています。

遺言を作成し,遺言執行者を指定しておくと,遺言の内容に反対する相続人がいたとしても,遺言執行者は遺言の内容通りの執行を行うことができますので,安心です。遺言を作成することで,分割ができないままに何年も揉めるということを確実に避けることができるのです。

遺言を作成する際に特に注意すべきことは次の2点です。

まず1点目は,無効にならないよう,有効な遺言を作成することです。

遺言の作成方法は法定されており,間違ってしまうと無効になってしまいますし,認知症が進んでいて,遺言を作成する能力がない状態で作成された遺言も無効になってしまいます。弁護士等の専門家に相談したり,医師の判断を仰いでから作成することで,必ず有効な遺言を作成してください。

2点目は,争いを生まない遺言の作成をすることです。

遺言書を作ったことで,紛争を誘発してしまっては,遺言を作成する意味が半減してしまいます。

特に,相続人に保証された最低限度の相続分である遺留分については,遺留分を考慮した上で分割割合を定めるとか,遺留分を考慮せずに作成する場合には,なぜ,遺留分すら与えないような内容の遺言を残すのかにつき,きっちりとあなたの想いを記載しておく等の対策をする必要があります。

分割方法を工夫することにより,一家で支払う相続税の総額を減らす等,遺言の内容により,出来ることは多いです。遺言作成は,相続に強い弁護士,税理士に相談するのがおすすめです。

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相続税の申告について(基礎)

弁護士法人心の岩崎です。

今日は,相続税の申告について,記事を書きます。

1 申告期限

まず,相続税の申告期限は,被相続人が亡くなってから「10か月以内」です。

10か月以内に申告をし,税金を払わないと,延滞税や無申告加算税がかかってしまいますので,申告をする必要がある人は10か月以内に申告をすることが必要です。

2 相続税を申告する必要のない人

全ての人が相続税申告をする必要があるわけではありません。

2018年現在,相続税の申告が必要な人は,全体の7%と言われていますので,93%の人は申告する必要がないのです。

申告する必要のある人とない人は基礎控除の範囲内か否かで決まります。

基礎控除とは,「3000万円+相続人の数×600万円」で計算されますので,例えば,相続人が妻と子供1人の場合には4200万円を超えない限りは,相続税を申告する必要はありません。

3 相続税をゼロ円とできる場合であっても申告しなければいけない場合

注意しなければならないのは,小規模宅地の特例や配偶者控除の特例等を使うことで相続税がゼロ円となる場合には,相続税を支払う必要はないにもかかわらず,申告が必要になることです。

小規模宅地の特例とは,居住用,事業用不動産等の一定面積までの不動産について,特定の相続人が相続する場合には,80%(居住用の場合)または50%(事業用の場合)の減額を受けることができる特例です。

例えば,上述した,相続人が妻と子供1人であり,基礎控除が4200万円の場合に,預金が2000万円,被相続人が住んでいた家が5000万円だったとすると,遺産の総額が7000万円であるため,相続税を支払わなくてはいけないようにみえますが,小規模宅地の制度を利用することで,不動産の評価額を20%にできる結果として,相続税がゼロ円となる可能性があります。

この場合には,相続税はゼロ円ですが,相続税申告書を税務署に提出する必要があります。

 

配偶者控除とは,配偶者については,法定相続分以下または1億6000万円以下の相続について,相続税がかからないとする特例です。遺産が5億円のケースで,配偶者が2億5000万円相続したとすると,配偶者には1円も相続税がかかりませんので,非常に大きな特例です。

ただし,納めるべき相続税がゼロであっても,やはり相続税の申告が必要となりますので,注意が必要です。

このように,相続税を申告する必要があるか否かは,専門的な判断が必要になりますので,ご不安な場合には,相続に詳しい税理士さんにご相談ください。

 

民法改正案(持ち戻し免除の推定)

前回に引き続き,今日は民法改正案で議論されている,持ち戻し免除の推定規定についてお話します。

そもそも持ち戻し免除につきご存知ない方もいらっしゃると思いますので,そこからご説明します。

持ち戻し免除を理解するためには,まず,特別受益の制度について知っておく必要があります。

被相続人の生前に,①遺贈,②結婚または養子縁組のための贈与,③生計の資本として受けた贈与を受けた相続人がいる場合には,原則として①②③の受益を考慮して遺産分割を行います。
これが特別受益の制度であり,相続人間の公平に配慮した制度です。

例えば,遺産が9000万円で相続人が子供A,子供B,子供Cの3人,Aさんだけが生計の資本として過去に3000万円受け取っていたとすると,まず9000万円からAさんが受け取った3000万円を遺産へ「持ち戻し」,1億2000万円が遺産であるとしたうえで,子供3人へ分配し,1人が4000万円を受け取ることになります。

具体的な9000万円の分け方としては,Aさん1000万円,Bさん4000万円,Cさん4000万円です(Aさんは生前3000万円貰っているので,トータルで全員4000万円になります)。

このように,特別受益の計算の際には,実際に存在する遺産に,過去の受益を「戻して」から計算をするので,「持ち戻し」と表現するのです。

被相続人が,あえて相続人が受け取る金額に差を設けようとしていた場合等,特別受益の持ち戻しをしなくて良いという意思を有していた場合には,持ち戻しをする必要がなくなります。
これを持ち戻しの免除といいます。

上記の例で持ち戻し免除の意思表示がされていると,9000万円の遺産をABCで3000万ずつ分けることになります(Aさんだけ生前に3000万円もらっているのでトータル6000万円になります)。

しっかりと持ち戻し免除の意思を表した書面が作成されていれば良いですが,そうではない場合には,持ち戻し免除の意思があったかなかったのかが争われることがあり,証拠が不十分であれば,原則どおり,特別受益として持ち戻すこととなります。

今回改正案で議論されているのは,20年以上の婚姻歴のある配偶者に,自宅を贈与した場合には,持ち戻し免除の意思を推定しようというもので,現実問題として持ち戻し免除の意思を表した書面が作成されることは少ないなかで,自宅について,配偶者が特別受益による持ち戻しにより失うことを避けようという立法政策となります。

前回お話した配偶者居住権と同じく,配偶者の生活拠点たる自宅を保護しようという意思が強く感じられるところです。

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民法改正案(配偶者居住権等について)

相続法分野は,法改正や,最高裁判例の変更が比較的多い分野ですので,業務で使う弁護士としては,日々チェックが欠かせません。

最近では,それまでは当然分割であるとして遺産分割の対象ではなかった預貯金について,遺産分割の対象となるとした最高裁決定(平成28年12月19日)が記憶に新しいところです。

さて,現在法務省,法制審議会では,相続に関する複数の大きな変更について議論がされています。
今日は,これらの審議案のうち,配偶者の居住権と,なぜそれが議論されているのかについて書いていきたいと思います。

配偶者の居住権については,一時的な保護としての短期(半年ないし1年)の居住権と,長期の居住権の2つの制度が議論されていますが
今日のお話は長期居住権についてです。

長期居住権とは,自宅の権利を所有権と居住権に分けることで,居住権の金銭評価を下げ,配偶者が自宅に住み続けやすいようにしようとしています。
少し難しいと思いますので,現代の遺産分割の問題点について説明していきます。

まず前提として,念頭に置かれているケースは,
①遺された配偶者の方は比較的高齢で,1人で生計を立てられるほどの収入,貯金がなく,老人ホームやヘルパー等,将来の出費が見込まれること
②遺産の預貯金が,(配偶者の支払うべき代償金を考慮してもなお配偶者に残るほど)潤沢にあるわけではないこと
③法定相続分を基軸に分けようとすること

という家庭の相続のケースです。
①②についてはほとんどの家庭が当てはまりますし,③についても現代の方々の多くが法定相続分を意識していますので,①②③に当てはまるご家庭はかなり多いのです。
このようなケースの場合,
「法定相続分を基本に財産を分けようとすると,配偶者が家を相続できなくなったり,なんとか家を相続できたとしても,将来の生活が脅かされる可能性」があります。

たとえば,自宅の価値が土地建物で5000万円,遺された預貯金が2000万円とします。相続人は配偶者と子供が1人であるとすると,法定相続分は3500万円ずつです。
遺された配偶者が自宅に済むために,自宅の登記名義を配偶者にするためには,預貯金を全て子供に渡した上で,さらに1500万円を代償金として支払わないと自宅を取得できません。
1500万円を払うことのできる配偶者の方はそう多くはありませんし,仮になんとか払えたとしても,将来かかる老人ホーム費用等の出費に耐えうる貯金を失うと,生活の基盤が脅かされてしまいます。

本改正は,自宅の価値5000万円を,例えば,所有権3000万円,居住権2000万円と分けることにより
(実際には何年居住することになるのかにより評価は異なることになります),配偶者が居住権を取得した上で,預貯金の一部を引き継いだり,支払うべき代償金を減らすことで,配偶者の生活の安定を目指した制度なのです。

なぜ,この制度が必要になるか,昔は問題とならなかったのか につきましては,上記①②は従前から変わりませんが,③の権利意識が,ここ数十年で大きく高まっているということが挙げられます。

上記の問題は「お母さんが亡くなるまでは土地建物はお母さん名義で良いよ。預金は半分にしよう」という法定相続分を無視した分け方であれば生じないのです。

今回の法改正は,国民の権利意識が高まってきたことにより生じた問題を,修正するための立法ということになります。

弁護士法人心東京駅法律事務所では,相続の案件を積極的に取り扱っております。

遺言と遺留分について

こんばんは,弁護士法人心の岩崎です。

先日の記事で遺留分について話題にしましたので,本日はその続きとして,遺言を作成する立場から

遺留分について考えてみたいと思います。

 

仮に,「長男に全て」という遺言を残したいという方がいるとします。

もちろん,遺言の内容は遺言を作成する方の自由なのですが,遺留分には注意をする必要があります。

先日の記事のとおり,遺言によっても遺留分を侵害することはできず,遺留分を侵害されている者は遺留

分を請求できますので,遺言を残して亡くなった後,長男以外の相続人が,遺留分を請求してくる可能性があるのです。

 

遺留分の対策としてはどのようなものが考えられるでしょうか。

1つの考え方として,他の相続人の遺留分を考慮しつつ,遺言を作成するという方法があります。

相続人が子供3人の場合,長男以外の相続人の遺留分は6分の1ずつですので,

「長男には不動産(4000万円),次男と長女には1000万円ずつの預貯金を与える」といった内容にすることが考えられます。

遺留分を全額与えなくとも,一部は財産を与えることとしておき,他の相続人に配慮をみせることにより,将来の紛争を防ぐということも考えられます。

遺留分を考慮せず,全ての財産を長男に与えるという内容で残すのであれば,まずは,なぜそのようにしたのか,しっかりと他の相続人が理解できる物を事前に準備しておくべきです。

次に,相続人が遺留分を請求してきた場合の対策についても,しっかりと検討しておくべきです。

たとえば上述の相続人が3人のケースで,仮に預貯金がなく,不動産(6000万円)を長男に遺したい時に,生前になんの対策もしていなければ,長男以外の相続人の遺留分の請求により,結局長男は不動産を売却してお金を作らざるをえないので,長男に不動産を遺すという目的は果たせなくなってしまいます。

亡くなる際に預金が十分にないことが考えられるケースでは,事前に,受取人を長男とした生命保険金を利用するなどして遺留分の支払に耐えうる現金を準備しておく必要があります。

 

このように,「長男に全ての財産を遺す」といったシンプルな遺言であっても,実現は簡単ではありません。

もちろん,事業の承継の問題,分け方をこまめに定めたい等,複雑な目的を達成したい場合には,遺留分や税金の問題に配慮しつつ,遺言の文言についてしっかりと専門家が検討した上で作成する必要がありますので,必ず弁護士にご相談ください。

 

 

遺留分について

今日は,遺留分についてのお話をしたいと思います。

1 遺留分とは

遺留分とは,兄弟姉妹以外の相続人に対し留保された相続財産の割合のことです。

ちょっとわかりずらいですが,要するに,兄弟姉妹以外の相続人には,遺言などによっても侵害することのできない,最低限取得することのできる相続分の割合が定められているのです。

たとえば,被相続人が父親で相続人が子供二人(長男,次男)のケースで,父親が「長男に全ての財産を与える」という内容の遺言を残している場合であっても,次男は父親の財産の4分の1(4分の1になる理由は下で説明します)を取得する権利を有しています。

2 遺留分の具体的割合

遺留分の具体的割合は,法律で定められている遺留分割合(抽象的遺留分)を,法定相続分の割合に従って分けた割合です。

遺留分割合は,①直系尊属のみが相続人である場合は,被相続人の財産の3分の1であり(民法1028条1号),②それ以外の場合は2分の1です。

まず①のケースについて説明します。

直系尊属とは,父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族のことですので,直系尊属のみが相続人である代表的なケースは,子が亡くなり,親が子を相続するパターンになります。

子が親に対し遺言を残しているケースは多くありませんし,子から親への贈与が遺留分の問題となることも比較的少ないので,①のケースが問題となることはあまりありません。

ほとんどは②のケースということになります。

②のケースは①以外の全ての場合ですので,ほとんどの遺留分事件は②ということになります。

上述した,父親が被相続人で,相続人が長男と次男,「長男に全ての財産を相続させる」との遺言がある場合の,次男の遺留分についての計算方法は,以下のとおりになります。

まず,法律で定められている遺留分割合(抽象的遺留分)は2分の1です。

次に,次男の法定相続分は,長男と次男の相続分は同じ割合ですので(民法900条4項本文),次男の法定相続分は2分の1となります。

よって,遺留分割合(抽象的遺留分)が2分の1,法定相続分が2分の1ですので,次男の具体的な遺留分は4分の1となります。

3 遺留分が問題となる場合には,弁護士にご相談ください。

遺留分については,注意すべき点がいくつかあります。

最も注意しなければならないのは,遺留分の主張については,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは,時効によって消滅してしまうことです(民法1042条前段)。

1年間が経過する前に,しっかりと内容証明等で,遺留分減殺請求権の行使をしておく必要があります。

また,遺留分を侵害しているか否か,侵害している場合にどれほど侵害しているかの問題は,贈与,遺贈した対象の評価額によって大きく変わってきます。

特に不動産の評価額は,評価手法により金額が大きく変わってきますので,争いになることが多いです。

上記のとおり,遺留分に関する争いは,難しいことが多く,厳格な期間制限もありますので,早い段階で弁護士に相談することが重要です。

 

 

 

相続の放棄について

東京駅法律事務所の弁護士の岩崎です。

あっという間に,今年もあと1か月となってしまいました。

今日は,相続の放棄についてお話したいと思います。

亡くなられた方のプラスの財産(土地や預金)よりマイナスの財産(借金)が多い時に,相続人が必ず借金を引き継がなければならないとすれば,とても酷ですよね。

そこで,民法は,そのような場合に,相続放棄といって,亡くなられた方の財産を相続人が引き継がないことを認めています。

しかしながら,相続放棄は注意すべきポイントがたくさんあるのです。

①3か月という制限があること

相続放棄は,「自己のために相続の開始があったことを知った時から」3か月以内にしなければなりません。

親族が亡くなってからの3か月間というのは,お葬式や親戚の集まり等でバタバタしているうちに,すぐに過ぎてしまう期間です。

例外的に,亡くなられた方に借金があることを,相続人がまったく知らなかった場合等に,借金があること等を知った時から3か月となる場合もありますが,いずれにせよ,迅速に行動しなければ,莫大な借金を背負うことになりかねません。

②たくさんの資料を収集する必要があること

相続放棄の申述は亡くなった方の最終住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

そして,申述の際は,申述書の他,添付資料や相続人関係図を付けて行います。

相続のパターン(親が亡くなり子が相続したのか,子が亡くなり親が相続したのか,兄弟間の相続なのか)により必要な添付資料は異なりますし,場合によっては膨大な資料の収集が必要となります。

③やってはいけないことがあること

例えば,亡くなられた方の預金を引き落として使ってしまったり,あるいは亡くなられた方の借金を亡くなられた方の預金で返済してしまうなど,一定の行為をしてしまうと,相続を単純承認したものとみなされ,放棄ができなくなってしまうこともあります。

①②③のとおり,相続放棄は,すぐに行わなければならないのに,手間暇がかかる上,注意すべきことも多く,しかも失敗すると取り返しのつかないことになってしまう手続きです。

もちろん,救済する制度・・たとえば,3か月以内に放棄すべきか判断がつかない場合等には,裁判所へ3か月の期間の延長を申請する制度もありますが,この制度を使うためにも多くの必要資料が求められることがあります。

少しでも相続放棄をする可能性がある場合には,しっかりと専門家に相談してください。

 

 

東京の10月の月間雨量

台風が続き,10月の東京は雨ばかり。

今年の10月の東京の月間雨量は531・5ミリでした。

10月としては,1890年からの128年間で歴代3位の記録です。

特に土日の雨が多かったのでうんざりしてる人も多いと思います。

来月からは良い天気が続くと良いですね。

 

内定者研修

今日は,来年の4月から入社する内定者の方々の研修に参加してきました。

その中の1人は,来年から一緒のチームで働くことになるので,誰になるのか

今から楽しみです。

後遺障害の研修

今日は事務所内部で,後遺障害に関する研修がありました。

交通事故を扱う弁護士が多く,後遺障害についても多くの経験を共有できることが

弊社の強みだと感じています。