相続した不動産の所有権放棄 第1回

今回は,法改正が予定されている相続不動産の所有権放棄の制度に関する第1回です。

前提として,上記のような制度が予定されている理由として,①相続放棄が硬直的な制度であること,相続放棄をしても不動産の管理義務は残ること②負の不動産,放置不動産の増加 が実務上の問題として挙げられます。

①まず,相続放棄は,全ての財産を放棄するか否か という制度であり,特定の遺産を選別して取得したり放棄したりすることはできません。相続債権者を害することも考えられるので,当然といえば当然ですが,引き継ぐか引き継がないかの2択です。さらに相続放棄をしても不動産に関して「自己物と同様の注意義務」が存在しており,放棄をした後に,土地の崩落等により責任を追及されるケースが存在しています。

②相続放棄をしない場合には,不要な負の不動産が含まれる場合であっても相続人が引き継がざるをえないため,一応相続はするものの,登記する費用が面倒であるため登記をせず,また,管理もしないという状況が生じています。

この点は次々回以降説明をする相続登記の義務化 にも関わる話です。

これらの問題点から,相続の際に土地を放棄する制度を新設することで,所有者,管理者が不明であるという不動産を減少させ,また,放棄をしても責任追及をされるというリスクから解放する という制度が求められることになりました。

遺留分侵害額請求第3回

遺留分侵害額請求の第3回です。

前回に引き続き,遺留分の金銭債権化に伴う実務上の問題点をお伝えしていきます。

金銭債権化に伴う,(予想外の?)問題点は,金融機関が遺留分請求者からの被相続人の遺産開示を拒むことが出てきたということです。個人的にはおかしいと思うのですが・・。

どういうことかというと,従前は遺留分請求権は形成権であったため,前回,前々回の事例のとおり,1億円の預金があれば4分の1の遺留分権利者は2500万円の預金債権を有していました。

しかし,金銭債権化したことで,遺留分権利者は遺留分義務者(遺言で全てを取得する相続人等)に対して債権を有するにすぎず,直接銀行に対しては債権を持たなくなりました。

一部の銀行が,上記ロジックを理由に,遺留分権利者が亡くなった方の遺留分を請求するために遺産や取引履歴の開示を求めた際に,相続人ではあるが預金債権を有していない という理由で拒否をするという事例が起きています。

たしかに預金債権は有していないかもしれませんが,相続人には遺留分という最低限の権利があり,当該権利の行使のためには遺産及び取引履歴の確認が必要である以上,被相続人の預金情報を開示しないというのは誤った運用だと思います。

上記のような事態が生じた場合には,弁護士にご相談ください(遺留分侵害額請求権を根拠に,弁護士会照会にて開示を求めることになります。)

遺留分侵害額請求第2回

前回は遺留分が形成権から金銭債権となったことを説明しました。

遺留分が金銭債権になったということは,前回の事例(遺産が不動産A(評価5000万円),不動産B(評価3000万円),預貯金1億円)であった時に,遺留分権利者Xさん(遺留分割合4分の1)が遺言で全部の遺産を取得するYさんに対して遺留分を請求するケース)において,XさんがYさんに請求できるのは1億8000万円の4分の1である4500万円である という結論になります。

新法はいかにもシンプルでわかりやすい構成ですが,いくつか問題点があります。

まず,Yさんが不動産Aが不要であり,Xさんが不動産Aが欲しいという場合に,従前の形成権の場合とは異なり,Xさんは不動産に持分を有さず,金銭債権しか持っていませんから,遺留分の解決として不動産で解決するためには,代物弁済によらざるをえないということになります。

この場合,Yさんが不動産Aを取得し,その後に代物弁済としてXに譲渡し,Yさんは譲渡所得課税が課税されるということになります(当然相続税も課税されます)。多くのケースが遺言に基づく相続税申告後に上記処理がされることを考えると,金銭債権であると明確にされたことにより,課税関係が複雑になることがあります。

遺留分侵害額請求第1回

遺留分侵害額請求は令和元年相続法改正で従前の遺留分請求権を構成しなおす形で規定されたものであり,従前との違いは,①従前は形成権であった遺留分請求権を金銭債権(侵害額請求権)と構成したこと,②生前贈与に対する遺留分請求について10年の期間制限を設けたこと が大きな変更点です。

形成権から金銭債権にしたことでなにが違うのか?という点については,少し難しいところですが,従前は「遺留分を請求する」という意思表示が遺留分侵害者に到達すると,ただちに各遺産について遺留分割合の限度で遺留分請求権者が持ち分を有すると考えられていました。

例えば,不動産A(価値5000万円),不動産B(価値3000万円),預金1億円 について,遺留分割合が4分の1であるXさんが,遺言書で全遺産を取得するYさんに対して遺留分を請求したとすると,「遺留分を請求します」という意思がYさんに到達すればただちに,不動産AとBはXさん4分の1,Yさん4分の3の共有となり,1億円の預金についても,Xさん2500万円,Yさん7500万円の預金債権が生じる と考えられていたわけです。

実務的には,AやBについて共有を維持するのはナンセンスなので,最終的には遺産合計の1億8000万円の4分の1である4500万円をYさんがXさんに支払い,A,Bの完全な所有権と5500万円をYさんが取得するという解決をすることが一般的でしたが,当時でいえば,お金で払うか不動産を共有するかという判断は被請求者であるYさんにあったため,Yさんが望めば,不動産A,Bは共有とし,お金を2500万円Xさんに渡す という解決も可能であったわけです。

Xさんが4分の1の不動産共有に不満があれば,後日共有物分割訴訟で解決すれば良い という考え方です。

しかし,不動産共有からの共有物分割訴訟の解決も手間ですし,実質的に遺留分は金銭解決されることが主でしたから,(形成権という難解な権利関係にも問題点がありましたし),いっそ金銭債権にしてしまおうというのが令和元年の法改正です。

特別寄与料第2回

特別寄与料 第2回です。

第1回で,どのような方を対象としているのかというのはお伝えしました。

そして,第1回の条文のとおり,本制度は,無償の寄与について,「被相続人の財産の維持増加」に寄与した場合に認められるのですから,たとえば,たくさん見舞いに行った とか,面倒を見た としても,成年後見制度を利用していたり,施設や老人ホーム,ヘルパーの利用により,相応の支出を被相続人がしているケースなど,「被相続人の財産の維持増加」をしていないケースでは認められないことに注意が必要です。

特別寄与料に関する裁判例についても,特別の寄与という要件は,実質的公平の理念及び被相続人の推定的意思という制度趣旨に照らし,その者の貢献に報いるのが相当と認められる程度の顕著な貢献を意味し,少なくとも,①被相続人が療養看護を必要とする状況にあったこと(療養看護の必要性),②特別寄与料の請求者が,ある程度専従的に療養看護を行ったこと(専従性),③療養看護が継続的に行われたこと(継続性),④被相続人の財産が維持,増加したと認められることが必要である とされており,ハードルはかなり高いと言っていいでしょう。

また,本制度は6か月という非常に短い期間制限があるため,主張をする予定の人の準備期間が短いという問題点があります。

上記の認定要件,出訴期間等からすれば,特別寄与料を請求可能なだけの関係を持っている方であれば,事前に遺言書等で遺産の一部を取得できるように配慮をしていただくことを検討するのが望ましいといえます。

特別寄与料第1回

特別寄与料 第1回

特別寄与料の制度は令和元年相続法改正で新設された制度です。

条文としては,民法1050条1項に定められており,「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務を提供したことにより,被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人,相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は,相続の開始後,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払いを請求することができる と定められています。

この条文が定められた主な制度趣旨は,いわゆる寄与分の制度では救済されない(相続人の寄与とみなすことでは救済されない)方について,寄与分を認めようというものです。

具体的には,例えば,父が亡くなり相続人は子が3名(A,B,,C)で,AとAの妻Dは仕事を辞め,寝たきりとなってしまった晩年の父の介護に尽くし,施設やヘルパーを利用せずに,24時間の間3時間に1回必ず痰廃除等を行う等,扶養義務の範囲を超える介護を尽くしたことで,本来支出されるはずの介護費を免れ,財産の維持に努めたとします。

この場合はAのみならず,Aの配偶者Dの介護寄与については,従前から判例が,DをAの履行補助者とみなすことにより,Aの寄与分として算定することを許容していましたので,このケースではDの救済は寄与分制度を利用すれば足り,特別寄与料などという制度は不要です。

しかし,上記の案件で,Aが父より先に死亡しており,AとDに子がいないケースでは,父の相続人はB,Cの2人となり,Dの介護寄与について相続人の寄与分として算定することは不可能であり,Dの救済が必要になります。

このDの救済を図る制度が,特別寄与料であるということです。

令和元年相続法改正制度の実務的運用と今後の相続に関する法改正

今回からしばらくは,相続法改正にまつわる実務的な話や,今後の相続に関する法改正の概要,注目すべき点等についてお伝えしていきます。

予定としては今回含めて13回で,令和元年相続法改正に関して,特別寄与料の制度と実務について2回,遺留分侵害額請求に関して2回

今後の相続法改正について,不動産放棄に関して2回,相続登記の義務化について2回,特別受益,寄与分の主張規制について2回,暦年贈与制度の廃止について2回

それぞれの制度概要及び実務の実態,注目すべき点などについて記載していく予定です。

新しい制度について考える際は,現行法の規定と問題点(法改正がされるに至った理由)を検討するのが大切です。

相続法改正が行われるのは,実務上経験する法律の問題点のうち,とても重要なごくごく一部の事項だけであり,改正がされるということは,多くの実務家が問題だと考えている点についてであるからです(やむを得ないことですが,立法を担う人員のリソースの問題がありますので,優先度,重要性が低い事項は法改正まで至りませんし,そのあたりは判例法理による個別の解決に委ねられているところです)。

相続は今後40年間ほどは増加が見込まれており,国家として対応が必要な事項も多く,多くの法改正が見込まれています。実務家として,案件解決に大きな影響を与えるであろう改正も多く控えているので,情報収集に努めていきたいと思います。

相続人がいないとき

相続人が存在しない場合に,被相続人と特別な縁故があって遺産の一部の取得をしたいと考えたり,被相続人に対して債権を有しており,遺産から回収したいと考える場合には,まず相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります。

そして,相続財産管理人の選任が済んでも,そこから実際に特別縁故の主張について審理をしてもらうまでには,相当な時間を要します。

なぜなら,相続財産管理人は,相続人が不存在であることを確認し,相続人の方がいないかどうか呼びかけ,遺産を整理(不動産売却等)し,債権者等がいないか呼びかけを行い・・という各手続を行う必要があるため,これらが全て完了し,特別縁故者の申し出ができる期間が始まるのは,相続財産管理人が選任されてから約10か月後になるからです。

相続人が「行方不明」であるとか「疎遠で居場所がわからない」場合は,相続人は「いる」わけなので上記の手続を行うわけではありません。相続人が行方不明で,既に死亡している可能性が高いケースでは,失踪宣告をしたうえで相続財産管理人選任へと進む場合がありますが,失踪宣告についても1年近くかかる手続ですので,特別縁故者の主張の審理までには合計2年以上の時間がかかることを覚悟しなければなりません。

これらの手続にかかる時間の長さを回避する方法としては,特別な縁故をお持ちの方々は,被相続人が亡くなる前に遺言書を書いてもらう方法があります。

遺言書があれば,遺言書に従って財産を取得できますし,被相続人からしても,国庫に帰属するよりはご縁があった方たちが取得することを望まれることが多いように思います。

相続人多数案件で揉めてしまった場合

近年多い相談のパターンその1

相続人が10人以上存在するケースで,多くの相続人が合意を形成しているにもかかわらず,少数の方が判子を押してくれない というケースがあります。

お子様がいない方の相続で兄弟相続となった場合に起きがちです。

このようなケースは,少数の方から見れば争ったところで大きな経済的利益の変動があるわけではなく(もとの相続分も少なく,兄弟相続のケースで寄与等が問題となるケースは稀であるため),話し合いで解決したいところです。

仮に話し合いが決裂してしまっても多くの場合,少数の方の有している相続分は大きさでいえばたいしたことはないことが救いであり,審判にて問題となっている不動産の持ち分につき換価分割や代償分割を提案する等により解決を図ることができるため,解決はそこまで難しくはありません。

解決が困難となるのは,遺産である不動産が共有持ち分であり,ご存命の別の方も共有している,少数の争っている方々も共有持ち分を持っている というケースです。相続人間だけで完結しないため,換価の審判はでませんし,代償分割をしても結局他の持ち分を有する方との折衝が残ります。最悪,共有で遺産分割調停,審判を終わらせた後に共有物分割訴訟という第2の裁判を起こさなければ解決ができません。

不動産は可能な限り共有は避ける というのが基本ですが,このように相続においても,共有であることで解決に時間がかかるというケースも増えています。

空き家特例

最近相談を受けることが多いのが,いわゆる空き家特例です。

相続をした不動産につき,不要であるから売却をしたい というケースは多いのですが,譲渡所得課税により約20%の課税がされてしまいます。もちろん,取得費は差し引ける(リフォーム費用含)のですが,購入時期によっては資料が滅失していることもありますし,20%の税金は負担感もあります。

この譲渡所得課税の特例として,被相続人のみが居住しており,相続が発生したことによって空き家になった不動産につき,更地にして売却をすることで,3000万円の範囲につき非課税となるのが,空き家特例です。

以下,重要な部分につき要件を確認していきます。

①家屋及び敷地の両方を,相続又は遺贈により取得すること。

本特例は区分所有権には適用されない(マンション,アパートの部屋を相続した場合は×)ということと,家と敷地両方を相続した場合にのみ適用されることに注意が必要です。

②相続が発生してから3年が経過する年の12月31日までに売却をすること

③家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること

④相続の開始の直前に,被相続人が唯一の居住者であったこと

⑤売り渡し先が第三者(親族等ではない)であり,かつ1億円以下であること

⑥建物を取り壊して敷地のみで売却をすること

⑥については,建物につき耐震リフォームをして建物と土地を売却する場合にも適用がされますが,昭和56年以前の建物につき,耐震リフォーム等の費用をかけて残すというケースは少ないので,更地にして敷地売却という場合が多いです。

上記のように,いろいろと要件が多くややこしいですが,3000万円まで譲渡所得課税がかからないのは相当に助かる制度なので,使えそうな場合には上記要件に気を付けて売却手続を行う必要があります。

例えば,⑥に関して,現状有姿の売却(不動産業者に建物ごと渡して売却を完了してしまい,その後に不動産業者が取り壊して更地にするケース)の際に,現状有姿のまま引渡して売買完了にしてしまうと,⑥の要件を満たさないことが明らかであるため,不動産業者が解体費用を負担するケースであるとしても,引き渡し時まで所有権を留保し,引き渡しは更地状態で行うよう工夫をする等が必要となります。

詳しくは、弁護士へご相談ください。

遺留分と相続税

今回は、弁護士・税理士の岩崎から遺留分侵害額請求をする際の相続税についてご説明いたします。

遺留分侵害額請求をして,金銭を取得する場合には,当然ながら相続税が発生します。ただ,一般的には,遺留分侵害額請求を請求してから解決をするまでに,相続発生から10か月が経過することが多いこともあり,①遺言書に従って相続税申告をしたうえで,②遺留分取得者は期限後申告(又は修正申告)して納税し,遺留分を請求された側は還付請求をして税金の返還を求めるというのが一般的です。

この②の申告の際に問題となるのが,相続税申告額と時価との差額をどうするのか という問題です。特に不動産や株式等,相続税評価と時価が乖離することが多い場合に重要です。

例えば,相続税評価額で1億6000万円,時価が2億4000万円のケースで,全遺産を遺言で取得したAさんに対し,遺留分割合4分の1のBさんが侵害額請求をし,2憶4000万円の4分の1である6000万円を取得したとします。

この場合,上述した遺言書どおりの申告は1億6000万円でなされていますから,1憶6000万円のうちBさんが6000万円を取得したとして申告することは誤りではありませんが,相続税は税法上取得額の割合で納税しますから,Bさんは4分の1の遺産しか受け取っていないにもかかわらず,相続税は16分の6を支払うことになり,納税額が過大になってしまいます。

ですので,この場合には,実際には6000万円の取得ですが,資料等を添付のうえ,税法上は税法上の遺産総額1億6000万円の4分の1である4000万円を遺留分として取得したと申告することができます。

遺産分割における特別受益と遺留分

遺留分侵害額請求は,遺留分を侵害する遺言書があるケースにおいて,主張するケースが大半ですが,遺言書がないケースにおいて,生前贈与に対する遺留分侵害額請求が問題となるケースもあります。

後段の遺言書がないケースにおいては,当然ながら遺産分割協議を行うわけですので,生前贈与を遺産分割協議で特別受益として考慮をするのか,遺留分侵害額請求まで必要なのか という検討が必要になるわけです。

同じことは,財産の一部についてのみ記載がある遺言書があるケースにおいて,残部につき遺産分割協議を行う場合にも生じます。

この問題の重要なポイントは,特別受益は法定相続分をベースに議論ができるが,あくまで遺産内での調整を行うものであり,遺留分は割合は法定相続分よりも少ないが,侵害があるのであれば,遺産外(相続人の財産)からであっても支払いを要求できる ということです。

例えば,極端な例ですが2000万円の遺産をAとBで分ける際,Aが生前に既に3000万円の生前贈与を受けていたとします。この場合,遺産分割協議の際にAの特別受益を考慮して分割をすると,Aが0で,Bが2000万円になります。生前贈与も含めてピッタリ公平に分割をしようとすると,Aがー500万(プラス生前3000万で2500万),Bが遺産2000万+Aから500万もらって2500万 の計算になるわけですが,こうはなりません。

あくまで特別受益は 遺産の分割方法 の範囲で考慮される事由であり,Aに対し自らの資金から支払えと主張はできないからです。

これに対して,遺留分はAの生前贈与に対してもかかっていけます。上記事例では,生前贈与も含めた5000万円の遺留分(4分の1)は1250万円であり,Bが遺産全額を取得することで遺留分侵害は起きませんので,結局Aに対して遺留分の請求はできません。

これに対して,遺産が2000万円,Aに対する生前贈与が1億円の場合には,Bの遺留分は1億2000万円の4分の1の3000万円ですから,遺産全額をもらってもなお1000万円の遺留分をAに対して請求できることになります。

詳しくお知りになりたいかたは,弁護士へ相談ください。

相続放棄するか否か悩んでしまった時

記録的に早い梅雨入りになりそうで,東京では雨の日が続いています。

梅雨入りが早いと梅雨明けは遅い傾向にあるそうで・・困りますね,

今回は,相続を承認するか,放棄をするか悩んでしまった際に取る手段についてお伝えします。

まず,悩むケースというのは

①プラスの財産があり,マイナスの財産は見つかってはいないものの不安である場合

②プラスの財産があまりなく,マイナスの財産があり,どっちが多いか微妙な場合

③プラスの財産がたくさんあるが,マイナスの財産もたくさんあり,どっちが多いか微妙な場合 等があると思います。

 

①の場合は,JICCやCIC,KSC等で債務の有無を調査し,自宅等の郵便物等で借用書等がないことを確認して,債務が見つからないのであれば,相続をすることになります。マイナスの財産が存在する可能性をゼロにすることはできませんので,一定の範囲で調査をして相続をするしかありません。

 

②のケースは,①の調査等,マイナスの財産額を把握することにくわえて,プラスの財産調査をする必要があります。借地権の評価が問題であったり,有価証券どこにあるかわからない等,調査に時間がかかる場合には,相続を承認するか否かの期間の伸張を裁判所に申し立て,3か月~半年ほど期間を延長し,その間に調査をすることになります。

 

③のケースでは,②で解決しますが,積極財産や消極財産の額が大きく,かつ,相続人全員の意向が一致する場合には限定承認をする(相続財産を全て明らかにし,換価し,債務者に対して清算を行い,残りがあれば受領する)ことも視野に入ります。

コロナ特例の変更について

新型コロナウイルスの影響による相続税申告等の期間伸張について,変更がありました。

これまでは申告書に「新型コロナウイルスの影響による」旨を記載すれば,申告期限の延長ができましたが,明日4月16日からその方法による伸長ができなくなります。

明日からは具体的な個別の状況を「災害による申告,納付等の期限延長申請書」を作成して記載することになります。

個別具体的な記載が必要となるため,全国一律にコロナによる延長申請が認められることはなくなりますので,具体的にどのような事情があれば延長ができるのか,確認しておくのが重要です。

まず,税理士や申告者が,コロナウイルスに感染をしたり,濃厚接触者に該当する場合には当然該当しますし,海外渡航に伴う隔離期間や,在宅の体制が整っておらず社員の多くが勤務できない場合等は申告ができない場合にあたります。

これらの要件はなかなか該当する方は多くないと思いますが,「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき,生活の維持に必要な場合を除き,みだりに自宅等から外出しないことが要請されていること」も個別延長の理由として認められておりますので,本日時点で蔓延防止重点地域に指定されている,東京や大阪,愛知,埼玉,千葉,神奈川等の地域においては,自粛要請がされますので,広く認められることになります。

これまで一律に適用できていた状況から,より具体的にコロナ特例の適用の可否を検討する必要が出てきますので,注意が必要です。

相続不動産の豆知識④相続した土地で立て替えたい

今回は,相続した土地に,新たに建物を建てたい と考える時のいくつかの注意点をお伝えします。

簡単にいえば,今建っているのと同じサイズの家は,建たないケースも多くある,という注意点です。

1 セットバック

セットバックという言葉は聞いたことがある人が多いと思います。道路の中心線から両面につき,一定の長さを確保しなければなりません。

建物を立て直す時にセットバックが必要な土地は多くあります。1メートル程度後退が必要になると,面積も大きな影響を受けますので,代償分割の評価の際にも注意が必要です。

2 既存不適格

昔は合法であったが,今では不適法な建物になっているケースです。立て直す場合には当然現在の法律に基づいて建築をしなければなりませんので,極端な例でいえば,昔は家が建てられたのに,今は建てることすら困難 な土地があります。

典型的な例は,接道義務(昔は2.7メートル接道していればよかったが,今は4メートル接している必要がある),用途地域変更(昔は工場が建築できたが,今は住宅専用地域),日影規制,容積率規制等で,立て直すと高さや床面積に制限が加わる,等です。

遺産分割において土地を取得する場合で,立て直しを検討する場合には,これらの規制に注意をする必要があります。

不動産相続の豆知識③生産緑地制度2

生産緑地制度の再指定と宅地化について

私は,急激に,ではないですが,暫時都市農地は2022年以降宅地化が進む可能性が高いと考えています。

宅地化抑制(生産緑地再指定)を求める理由 と宅地化を希望する(生産緑地再指定を求めない)理由に分けて記載していきます。

まず,宅地化抑制に働く大きな項目は,生産緑地制度が相続税の納税猶予(免除)とリンクしているという点です。

農地として一定の年月使用することで,相続税が免除される制度を使用している割合は,東京等大都市で約50パーセント強となっています。

宅地化することで,利子税等がかかったうえで納税をしなければならなくなりますので,上記一定の年月 が経過するまでの間は宅地化は事実上

難しいことになります。そうすると,これらの方々は,実際農業継続を望むか望まないかにかかわらず,10年間の再指定を検討することになりま

す。

宅地化希望(買い取り希望)をする大きな理由は,農家に後継ぎがいないことです。

都市農家の90%以上に後継ぎがいないという現状においては,上記相続税免除の制度を利用していない多くの農家は,再指定は望まないはずです。

実際に都市農家へ向けたアンケート結果等でも,再指定を望む方は数パーセントしかいませんので,相続税の免除の制度を利用していない等,特に壁が無い方は,宅地化(買い取り)を希望することになります。

農家に後継ぎがいないという現状に手を打たない限りは,上記傾向は顕著であろうと思いますので,相続税の免除が受けられる年数まで農家をしたうえで,クリアしたら買取を希望する,という方が増えていくものと思われます。

不動産相続の豆知識②生産緑地制度1

今回と次回は,生産緑地制度についてお話します。

生産緑地制度は,1992年に始まった制度で,要するに都市部の農地につき,生産緑地として指定を受け,農業を継続的に行うことで,本来は宅地並みの税金がかかるところを,農地並みの税金に下げることができる制度です。

30年間の期間を定めての立法であり,また,1万3000ヘクタールもの都市農地が指定されていることから,30年が経過する2022年を期に,一気に宅地化が進むのではないか という問題が2022年問題です。2022年を前に,現在都市農家の方々は,再度生産緑地制度の指定を受けるか(10年間の更新),買い取り請求をするか(生産緑地としての指定を解除し,市区町村に買い取ってもらいたいという請求。市区町村は自ら買い取るか,別の農家に渡すか,宅地化を認めることになる)の選択をしなければなりません。

2018年になり,2つの改正が行われ,農地としての維持はしやすくなっています。

1つは,生産緑地法の改正により,最低面積が500から300平方メートルに変更されたほか。農地レストラン等,一部の建築物についても建築ができるようになりました。

2つ目は,都市農地の賃借の円滑化に関する法律により,自動更新なしの賃貸が可能,かつ,貸していても相続税納税猶予が受けられるという制度が始まり,農地として利用できない際に,貸すことがしやすくなりました。

このような状況のもとで,はたして生産緑地の解除はどれほど進むのか,が次回のテーマです。

不動産を相続する時の豆知識①細分化規制

相続の際,必ずといっていいほど問題になるのが不動産です。

今回から数回は,相続にからむ不動産豆知識をお伝えします。

まず 最低敷地面積についてお伝えします。

最低敷地面積とは,不動産の細分化規制です。

現在では,コストを抑えて小さな住宅を購入したいというニーズは大きいですが,市区町村としては,不動産が細分化されて社会的経済的効能が下がるのを避けたいという考えがあります。

そこで規制されているのが,細分化規制であり,東京都23区のうち,世田谷区,練馬区,江東区は70平方メートル,目黒区,杉並区,中野区,板橋区では60平方メートル以下に細分化してしまうと,建物が建築できなくなってしまいます。

相続の際,1つの土地を2つに分けて,不動産会社に売ろう と考えても,この規制にひっかかってしまうと,建物が建築できなくなってしまいます。相続でもめてしまった場合にも,1つの土地を複数に分けることがありますが,上記区においては,慎重に面積を検討しないと,建物が建てることができない,無価値の土地が生じてしまいます。

上記規制は,所有権を制約する程度がかなり強い規制だと思いますので,市区町村側は,安易にこのような規制をしないでいただきたいとも思います。現在の核家族化した社会,景気等からすると,大きな土地の処分の難易度はあがっていますので,2つに割ることのできる145平方メートルの土地と,割ることのできない139平方メートルの土地では数平方メートルの差で,数千万円という価値の差が出てしまいかねないからです。

 

相続放棄が間に合わない

今年はコロナ禍でバタバタしていたこともあり,あっという間に感じました。

東京の感染者は増える一方で,今後も心配です。

今日は,相続放棄が間に合わない時の手段についてお伝えします。

相続放棄の期限は,相続の開始を知った時から3か月以内と,非常に短く設定されています。

亡くなった方と疎遠であったケースなど,相続放棄の期限内に財産調査を行うことができないケースもあります。

そのような場合には,相続を承認するか放棄するかの判断期間を延長する手続を行うことができます。

方法としては,相続放棄と同じく,被相続人の最終住所地を管轄する家庭裁判所に対し,所定の書式で申述することで延長が可能です。

この延長手続自体も,当然ながら相続の開始を知った時から3か月以内にしなければなりません。

必要な書類は,相続放棄に必要な戸籍類ですので,とにかく,相続が開始し,放棄するべきか迷った時には,戸籍類の収集と,被相続人の最終の住所地の調査をしましょう。

この手続により,期間を延長できるか否かは,裁判所が審判で判断しますので,提出すれば必ず通るというものではありませんので,申述の際には

なぜ期間を延ばす必要があるのか,しっかりと主張し,証拠等を提出することが望ましいです。

 

相続人以外が遺産を取得する場合

東京も冷え込みが厳しくなり,冬らしくなってまいりました。

本日は,相続人が被相続人と疎遠であった等の理由により,相続人以外が遺産を取得する場合の方法やメリットについてお伝えしていきます。

基本的には遺産は相続人以外取得できません(遺言書により遺贈がされていれば可能)ですので,まずは相続人が相続したうえで,

相続人から贈与を受けるという方法があります。

まずは,相続人間で遺産分割協議を完了し,その後に各相続人から贈与を受けるということになりますが,この場合の壁となるのが,相続税と

贈与税です。

まず,一旦は相続人が相続した後に贈与することになりますので,相続人は相続税を支払う必要があるにもかかわらず,すべて無償で贈与してしまっては,税金分の損害だけが残ることになってしまいます。そこで,相続税の計算ないし申告を済ませ,少なくともその金額は手元に残したうえで贈与する必要があります。

次に,相続人以外の,遺産を受け取る側には,多額の贈与税がかかりますので,ここでも注意が必要です。

上記のように相続人以外の方が遺産を受け取る場合にはかなりの税金がかかりますので,遺贈等,相続税で処理することができるようにしておくことが望ましいといえます。