家族に秘密で個人再生や自己破産は可能?

家族に知られることなく債務整理を行えるか、という質問は非常に多く、

また、ネット上にある情報でもこの点に関心が高いということがうかがわれます。

債務整理手続の中でも任意整理については、秘密で行うことができるという答えでほぼ固まっていると思いますが、

個人再生や自己破産については、どちらの見解も存在するように思えます。

個人再生や自己破産の場合に回答が難しいのは、まず裁判所によって必要な書類が微妙に異なることが原因としてあります。

例えば、裁判所への申立ての際に、申し立てる本人の収入や財産状況について資料を提出するのはもちろんなのですが、配偶者についてどの程度資料を求めるかは裁判所によって異なるのです。

比較的多くの資料を求める裁判所の場合だと、配偶者に秘密で進めることは事実上難しくなってきますし、逆の場合は秘密で進めることも可能な場合があります。

東京地裁の場合、申立て時点で求められる資料はそこまで細かくないため、実際にご家族に秘密で手続を進められたケースもあります。

もっとも、結果的に秘密で進められることはあるかもしれないですが、申立後に追加で配偶者に関する資料を提出するよう求められることもありますし、今後の生活の再建ということを考えるとそもそもご家族の協力があった方がいいのではないかという考え方もあります。

そのため、家族に秘密で個人再生や自己破産をすることもできるかもしれないですが、秘密で進めることを条件として弁護士に依頼することは難しいのではないかという感覚があります。

相続財産がないかどうかの確認

自己破産や個人再生といった手続をするにあたり、自分がいまどれだけ資産を有しているかを明らかにする必要があります。

価値のある財産についてはすでに売却等しているケースも多いかと思いますが、思わぬ落とし穴となり得るのが相続財産の問題です。

その中でも、特に不動産は元の持ち主が亡くなった後きちんと権利関係を決めていないことなどもあるので、

法的に権利を有しているにもかかわらず、それを当人がはっきりと自覚していないということもあります。

例えば、親がすでに亡くなっている場合であるとか、親が亡くなった後にその親(祖父母)が亡くなった場合に、

亡くなった方の所有していた不動産にその配偶者等が現在も住み続けているような状況だと、

なんとなくその不動産は今住んでいる人の所有になったんだなという気がします。

ただ、上記のケースでは子(孫)である本人も法定相続人になるので、

きちんと手続をとっていなければ子(孫)も持分を有しているということになります。

したがって、それを認識しないままに破産の手続をとろうとすると、

この不動産を売却しなければいけないというような話にもなりかねず、思わぬところへ影響が出るということになってしまうのです。

破産や再生の手続をとるにあたっては、このような状況になることがないように、

自分が相続人となり得る続柄の方が亡くなったことがないかどうか、今一度確認しておく必要があります。

弁護士としても、本人に「相続財産はありませんか?」とだけ聞くのではなく、

その人が相続人となるような続柄の方が亡くなっていないかを確認するように心がけています。

自由財産として認められる現金

自己破産についてネットで調べると、「自由財産」という言葉が目に入ると思います。

自由財産は、破産手続を行った後でも破産者の手元に残しておくことができる

つまり破産手続の中で処分されずに、その後の生活に利用することができる財産になります。

 

なぜ自由財産が認められるかというと、簡潔に言ってしまえば

破産したからといってもちろんその後の生活がなくなるわけではなく、

生活をしていくため、立て直していくために一定のお金がかかりますので、

一定の範囲で破産者の手元に残すことを認めているわけです。

 

自由財産というワードとともに書かれることが多いのが、「99万円までの現金は自由財産になる」というものです。

99万円という数字の根拠についてはここでは詳述しませんが、基本的に99万円までの現金であれば手元に残すことができるということになります。

ただ、ここでいう「現金」には注意が必要です。

 

日常生活の中で、現金と銀行等への預金を区別することはあまりないかと思います。

どちらも使おうと思えばすぐに使うことができるお金という意味では同じという認識が根底にあるからでしょう。

しかし、東京地裁における運用では、99万円までの現金とは文字通り「現金」である必要があります。

預金に99万円預け入れた状態で破産の申立てを行った場合、それは現金が99万円あることにはならないのです。

 

手元に現金として99万円を保持している人は普通いないと思いますので、

このような運用は実社会の常識とは離れているようにも感じられますが(東京以外の裁判所で、預金も現金と同等に評価する運用がされている裁判所もあります。)、

現時点での運用は上記のとおりなので注意が必要です。

 

住宅の価値

賃貸がいいのか持ち家がいいのか、というテーマは昔から語られているところですが、

いまだに明確な答えはなく、最終的には個人の考え方次第という玉虫色の締め方になることが多いように思います。

 

もっとも、この問題についてはどこに住むことを前提にするかという点も重要なのかなと感じます。

例えば、弁護士の行う債務整理手続の1つに個人再生という手続があるのですが、これを行うかどうかの判断にあたり、

住宅価値を査定することがあります。

基本的に地方で住宅を購入する場合、基本的には購入時を頂点として、住宅価値は時間の経過とともに右肩下がりとなるのですが、

東京あるいは首都圏に含まれる地域では、住宅価値があまり下がらず、場合によっては購入時よりも価値が増しているということがあります。

 

実は個人再生を行う場合は、住宅価値が下がっている方が都合がよかったりもするのですが、

それはさておき、東京で住宅を購入する場合、購入価格は高いかもしれませんが、

住宅価値が落ちないのであれば、支払ったお金が住宅という資産に形を変えているだけで、

その人の財産は減っていないということができそうです。

賃貸の場合、支払った賃料の分、その人の財産が減るということになるので、

両者を比較するときはその点を吟味する必要があるだろうなと感じます(もちろん、住宅を購入する場合、各種税金や維持費がかかりますし、住宅価値が高いほどこれらも高額になる傾向にあるので、やっぱり比較は難しいということになるのですが。)。

コロナによる裁判所への影響

新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてから早1年以上が経過しましたが、弁護士の業務にも多々影響が生じました。

とはいえ、法律相談を行ったり、ご契約をいただいたりといったことは、緊急事態宣言中も工夫をして行うことができておりましたので、

特に影響が大きかったのは裁判所の問題かもしれません。

 

あまり報道されることが多くないので、知らない方も多いかもしれませんが、最初の緊急事態宣言以降、裁判所の事件処理にも大きな変化がありました。

たとえば、東京地裁でいうと、係属している案件について、緊急性のないものについては基本的に期日が延期されました。

また、宣言期間中に訴状が提出された場合、すぐには初回期日が決まらないという状態が続き、部によっては2~3か月初回期日が決まらないということもありました。

 

加えて、本来であれば裁判所に出向くことが求められる手続について、出来る限りそれを不要とするようになりました。

たとえば、自己破産の手続を行う場合、東京地裁では申立直後にまず申立代理人の弁護士が裁判官と面談を行うことになるのですが(即日面接)、

対面方式ではなく電話面接の方式がとられるようになりました(現在でもその運用が継続しています。)。

また、破産手続が進んで最後に行われることになる免責審尋や債権者集会については、申立人本人が裁判所に出頭する必要があるのですが、

これについても原則不要という運用になりました。

 

裁判所へ出向くことをどこまで減らすべきなのかについては議論のあるところだと思いますが、

通常であればなかなか運用を変えることがない裁判所ですので、

コロナをきっかけにというのもなんですが、より使いやすい機関になってほしいと思います。

弁護士による方針の違い

花粉症の季節となってきましたが、幸か不幸かコロナの影響で常にマスクを着けているため

例年よりも自然と予防ができていて、症状が少ないのではないか…などと感じている今日この頃です。

今回は弁護士によって言うことが違うということはあるのかについてお話しします。

 

同じ問題を解決する場合でも、弁護士によって方針はまちまちだということはあり得ます。

これは別に、その中のどれかが正解で、ほかの選択肢が間違っているということではなく、

弁護士の考え方などによって勧めてくる内容が変わってくるのです。

 

法律相談をしていると、しばしば「どこの弁護士さんに相談しても同じことを言われますよね?」という質問を受けるのですが、

上述のような次第なので、けっこう変わってくるのではないかと思います。

特に債務整理のご相談などは、とり得る選択肢が複数あるという状況が起きやすいため、

おすすめの方針が事務所によって変わるということが少なくないです。

 

東京のような大都市だと弁護士の数も多いですし、また、今は電話での相談に応じている事務所も多いので

複数の事務所に話を聞いてみるといいでしょう。

特に、最初に話した弁護士とのやり取りの中で、ご自身の考えと合致しない点があったりした場合はなおさらです。

いくつかの事務所の話を聞いてみたうえで、方向性が同じである弁護士にいらすることで

以後の快適さも全く変わってくるかと思います。

管財か同時廃止か2

前回の続きで,管財事件と同時廃止手続の振り分けについて書きたいと思います。

管財事件が原則で,同時廃止手続は例外という立て付けであることを前回は書かせていただきました。

では,具体的にどういう場合に管財事件になるのかということですが,まずは管財費用を捻出できるだけの資産(20万円)があるのかどうかで区分けされます。

破産申立時点で預金通帳に20万円以上残っていたり,生命保険を解約した場合の返戻金が20万円以上あったりすると,管財事件となるわけです。

もっとも,今は多少資産があるけれども,これから依頼する弁護士に費用を払うことを考えると,そんなに資産は残っていないというようなこともあるかと思います。

ですので,このあたりの正確な計算は弁護士に相談して確認することが必須です。

次に,資産の問題をクリアしたとして,出てくる問題は免責不許可となる可能性の有無です。

破産して免責許可を受けるためには(借金が0となるためには),免責不許可事由に該当しないことが求められます。

免責不許可事由はいくつかありますが,代表的なものは,借金の理由がギャンブルや投資,浪費というケースです。

これに該当するおそれがあると,免責許可をしていいかどうかの検討が必要となるため,管財事件となる可能性が高いです。

さらに,自己申告ではこれらの基準をクリアしていたとしても,

本当に他に資産がないのか調査が必要とされたり,借金の額が多額なため,借入経緯に問題がなかったか調査をする必要が出たりなどの理由で

同時廃止手続ではなく管財事件となることもあります。

このあたりについては,申立代理人である弁護士が事前に依頼者の財産状況等を綿密に調査することで,

追加調査の必要はないという方向に(同時廃止手続で大丈夫だという方向に)働きかけることもできる部分です。

もっとも,最終的には裁判官がどう判断するか,ということなので,同時廃止手続が見込まれるケースでも,

“絶対に同時廃止になる”というような認識ではいない方がいいでしょう。

管財か同時廃止か1

自己破産の申立を行うと,管財事件になるか同時廃止手続になるかの振り分けがなされることになります。

簡単に言ってしまえば,管財事件は少し複雑な手続であり,同時廃止手続は比較的簡単な手続ということになります。

管財事件になると,裁判所から破産管財人の弁護士が選任されるのですが,破産管財人も無償でそのお仕事をするわけではありません。

では,だれがその報酬を支払うのかというと,破産管財人の報酬は破産を申し立てた人が負担しなければなりません。

ですので,同時廃止手続と比べて,管財事件となると少なくとも20万円以上多く費用がかかってくることになるのです。

「できるだけ手続にかかる費用を下げたい」というのは誰もが考えることですから,管財事件になるか同時廃止になるかという点は弁護士がよく質問を受ける部分です。

ただ,まず気を付けねばならない点は,破産制度の原則は管財事件であり,例外的に同時廃止という手続があるのだということです。

つまり,本来はすべてのケースで破産管財人をつけて手続を進めなければならないのだけれども,

破産管財人の報酬を払うことも難しく,免責していいかどうか(借金を0にして良いかどうか)という点で特に追加の調査をする必要もない等

例外的な場合に限って,簡潔な手続である同時廃止手続が選択される可能性があるということになります。

「管財事件なんてとんでもない大ごと」と考えている方もしばしばいらっしゃいますが,そうではないということを覚えておいていただければと思います。

相続放棄か債務整理か

ご両親や配偶者の方が亡くなり,実はその亡くなった方に借金があった,という話はよくあります。

借金については相続しなければいい(相続放棄すればいい)ということを,テレビなどの情報で知っている方も多いかと思います。

 

ただ,借金があった=相続放棄すればいいと短絡的に考えすぎると,思わぬことになりかねません。

典型的なのは,その亡くなった方がマイホームを持っていた場合ですが,借金があるといっても,資産全体で見ればプラスという場合には,

基本的に相続放棄せずに相続したほうが経済的に有利なわけです。

特に東京圏などの不動産価値が高い場所の場合,消費者金融で数百万円の借金があったとしても,住宅価値がそれを大きく上回ることがほとんどでしょう。

 

すると,相続放棄せずに相続を行うという選択になるわけですが,住宅の所有権を得るのと同時にやはり借金も相続することになります。

家を売るという選択ができる状況の方であれば,家を売却し,その売却価格から借金を一括で払ってしまえばいいかと思いますが,

その家を売ってしまうと自分の住む場所がないという状況の場合は,そう簡単に家を売却するという選択は採りにくいと思います。

 

このような場合に,借金を返済していくことが難しそうであれば,任意整理するという手があります。

自身で借金をしたことがない方にとってはまったく聞いたことがないということも多いと思いますが,

任意整理とは,要するに借金を今後どう支払っていくかについて,債権者と交渉する手続です。

これを行うことで,住宅を売ることなく借金の返済を行えることもありますので,

相続放棄すべきなのか,という問題に直面した方は,いずれにしても弁護士に一度お問い合わせいただくのがよいかと思います。

任意整理は家族に秘密のまま行えるか

弁護士に債務整理のご相談にいらっしゃる方で,比較的多くのご要望があるのが,

“家族に知られないようにしたい”というものです。

一般的に,自己破産や個人再生を家族に知られずに行うのは難しいですが,任意整理は秘密のまま行えることが多いです。

これは,自己破産や個人再生の場合,家全体の家計の状況を精査しなければならない関係で,

ご家族の協力が不可欠なのに対して,任意整理だとそこまで詳細な資料を求められない等の違いがあるためです。

 

ただ,事実上家族に言わざるを得ない場合も少なくないです。

よくあるケースが,“財布のひもを配偶者が握っている”というものです。

今後の返済について,毎月の自分のお小遣いの範囲でどうにかしたいとおっしゃる方がいらっしゃいますが,

その範囲で払っていければ特に問題ないものの,それでは到底足りないという場合,

奥様(旦那様)に事情を伝えざるを得ないかと思います。

 

債権者に対して“月収は○○万円だけど,自分のお小遣いは×万円なので,月額×万円の範囲でしか払えません”

と伝えることはできませんか?という質問を受けることもございますが,

そうした家庭内の事情は原則として認められませんのでご注意ください。

 

特に,広く一般に知られている会社にお勤めで,収入の高い方などは,

債権者側も十分な収入があることをよくわかっているので,家族に秘密のまま任意整理を進められるのかどうか,

弁護士によく確認すべきかと思います。

免責審尋について

東京地裁で自己破産の申立てを行い,同時廃止の手続となった場合でも,

基本的に一度だけ自己破産を申し立てた本人が裁判所へ行く必要があります。

いつ行く必要があるのかというと,申立てを行った数か月後にある「免責審尋」の期日に行く必要が出てきます。

 

裁判所へ行く,というのは普通の人にとってかなり緊張感のあるものだと思いますが,

代理人である弁護士も一緒に行くことになるのでご安心ください。

 

また,この手続は,(建前はともかく)ほとんどの場合裁判所に出頭しているのが本人であるということ,

住所や本籍地に変わりがないこと,申立てから免責審尋までの間に特段状況に変化がないこと

を確認するという手続のみで終わります。

自分の番になったら前へ行き,自分の名前を名乗り,住所や本籍に変わりはありませんかという裁判官からの質問に(「変わりありません」と)答える,

そして裁判官から代理人に対して,状況の変化がないかという質問があり,代理人が(「特にございません」と)答える,

これだけです。

そのため,本当に数十秒で終わることになります。

 

自己破産だと裁判所に行かないといけないから嫌だな…ともし思われている方がいるとしたら,

裁判所に行くといっても上述のとおりなのでご安心ください(管財事件となると異なってきますが)。

 

また,前にも少し書いたことがありますが,破産の手続は各裁判所によってかなり異なりますので,

申立人本人の出頭が必要なタイミングは,申し立てる裁判所によって変わりますのでご注意ください。

破産や再生の手続が都道府県によって違う?

裁判所によって,事実上運用が異なるケースがあるということは以前にも書かせていただいたことがあるかもしれません。

例えば,東京では事件数が多いためか,それを処理していくために,地方よりもスピーディーに展開を進めようとするイメージがあります。

そして,裁判手続の中でも自己破産や個人再生の手続は,特に各都道府県の特徴が色濃く出ているように思います。

 

余談ですが,裁判官は数年おきに全国転勤することになりますので,東京の裁判官がずっと東京にいるわけではないですし,

地方の県の裁判官がずっとその県で勤務しているわけでもありません。

ですので,感覚的にはどちらかというと各地方ごとの特徴は芽生えづらく,全国一律の運用になっていきそうだと思うのですが,

どういうわけか各都道府県ごとにかなり運用が異なっています。

 

まず,自己破産であっても個人再生であっても,裁判所に申立書を提出するわけですが,

その申立書自体が各地の裁判所が用意した書式を使うことになるので,内容が少しずつ異なっています。

そして,東京の運用で特徴的なのは,自己破産の場合に即日面談という代理人が裁判官と個別に話をする機会があり,

また,個人再生の場合には全件で再生委員が選任されるという点です。

いずれにしても,他の道府県よりも弁護士が行う手続が増える場合が多いといえます。

 

地域によっては,ケース次第ですが,申立書類を裁判所に提出し,特に内容に問題がなければ

裁判所に行くこともなく手続が終了することもあるということを思えば,これはかなりの違いがあると思います。

キャッシュレス決済

昨年の消費税増税と同時期に,国がキャッシュレス決済の普及を進めたこともあり,

以前と比べてかなりバーコード決済などの決済方法が一般的となってきました。

私個人は以前からカード派で,ポイントをこつこつためるのが好きだったりするのですが,

昨年の消費税増税と当時に,これまで以上にキャッシュレス決済を利用することによる還元率が高まり,

私の周りの現金派の人たちも,これを機にキャッシュレス決済に手を出していました。

 

弁護士として債務整理の業務に携わっていても,しばしばキャッシュレス決済の問題に直面します。

債務整理のご相談にいらっしゃる方は,基本的にカードをよく利用されている方であり,

ほとんどの場合が“キャッシュレス派”の方ということになります。

キャッシュレス派からすれば,「債務整理手続をとることでクレジットカードが使えなくなるだけでも不便なのに,

国の政策であるキャッシュレス決済によるポイント還元の恩恵にもあずかれないのではないか…」という不安が出るのは当然です。

 

しかし,キャッシュレスというのはクレジットカードのようないわゆる後払いシステムだけでなく,

事前にチャージしたうえで支払を行うプリペイドシステムもありますし,利用と同時に引き落としがされるデビットカードもあります。

後払いシステムの利用は債務整理を行うと難しくなりますが,先払い,同時払いは信用情報と関係がないので,継続して利用できます。

 

債務整理をすることでできなくなることについては,ぜひ弁護士に確認していただければと思います。

不動産の価値についての問題

東京オリンピックが来年に迫っていますが,

東京都内にお住まいの方は,「オリンピックが終わるまで不動産を買うのは待った方がいい」

なんて言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

オリンピック後に本当に不動産価格が下がるのかどうかはわかりませんが,

東京の不動産価格は地方と比べ物にならない高さです(もちろん場所にもよりますが。)。

例えば,10年前に買った住宅が,むしろ現在の方が値上がりしている,なんていうことも少なくないですよね。

今高騰している住宅を昔買っていた人がうらやましいなあと思ってしまいますが,

実はこの話,弁護士にとっては債務整理手続,特に個人再生手続との関係で,大きなポイントになることがあります。

 

個人再生とは,簡単に言うと,現在の債務額を圧縮し(減額し),その圧縮された金額を分割払いで支払っていく…というのが基本的な流れです。

ただし,清算価値保障の原則があり,破産した場合よりも債権者に弁済する額(配当額)が少ないというのは認められません。

これは結局,住宅ローンが残っていても,実はその住宅の現在価値が住宅ローン残額を超えている場合,

超えた分については弁済を行わなければならないということになります(破産したらその住宅は売却され,残ローンを上回る部分については債権者に対して弁済されることになるため)。

 

先ほど述べたように,東京では買った時より今の方が価値が上がっているということが少なくないですし,

上がっていないにしても下がっていないということがしばしばあります。

たとえば,4000万円で買った家のローンが3000万円残っていたとしても,住宅の現在価値が5000万円になっていたら,

個人再生をしても,差額の2000万円は払わないといけないということになってしまいます。

多くの場合,これでは個人再生をする意味がないという結論になってしまうため,別の方策を探るということになるでしょう。

 

このように,東京都内でマイホームをもっている方の個人再生は,不動産価値の問題が重要になってきます。

携帯電話の分割払いと自己破産

自己破産をする場合,そのとき抱えている借金の相手(債権者)に対して,

自己破産手続をとることを通知することになります。

銀行や消費者金融からの借入れがある場合についてはイメージがつきやすいかと思いますが,

携帯電話については盲点となることが多いです。

 

今は携帯電話本体の代金が高額ですし,各社とも分割払いがお得だと宣伝していることもあり,

携帯電話本体の代金を分割払いで購入されている方が多いと思います。

しかし,携帯電話本体の分割払いも,借金の1つとカウントされることになります。

ですので,本体代金をまだ払い終わっていない方が自己破産をして免責許可の決定を受ける場合,

他の借金と合わせて,携帯電話本体の代金も払わなくてよいこととなります。

そうすると,携帯電話は強制解約となり,利用することはできなくなってしまうのです。

 

現代社会で携帯電話なしの生活というのは,現実的に難しいという方も多いと思います。

そのため,破産手続を開始する前に,プリペイド携帯に変更するなど

手続開始後も通信手段が残る状態にするという方法もあります。

 

携帯電話については,先ほども述べたように,

生活必需品となっている側面が強いことから,他の借金とは区別して考えるべきではないかという考え方もあるようです。

最も身近な借金ともいえる携帯電話の分割払いですが,

債務整理手続の場面では,かなり複雑な問題があります。

専門家でも判断が分かれることがある話なので,迷われたらぜひ弁護士にご相談いただくのがよいと思います。

 

 

なお,弊所のホームページ写真が更新されました。

http://www.kokoro-tokyo.com/

過払い金請求事件はもう終わり?

もうずいぶん前から,弁護士事務所のCMや電車内の広告,あるいはホームページなどで「過払い金」というワードが多々登場しているので,

多くの方がなんとなく“過払い金請求によりお金が返ってくることがあるらしい”ということはご存知かと思います。

また,何年か前からは「時効」という言葉が出てきたことをご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

 

時効という言葉を聞くと,「あぁ,もう過払い金請求はできないんだ」という気持ちになるかもしれませんが,

実際のところ,まだ少なからず過払い金請求事件は存在します。

多くのホームページで紹介されているので詳述は避けますが,過払い金はおおむね平成19年以前からお借入れがある場合に発生します。

そして,過払い金返還請求の時効は10年なのですが,この10年というのがどの時点を始点に考えるのかがポイントになります。

 

この問題について,細かいことを言えばさまざまな論点があるのですが(途中で完済したことがある場合など),

基本的に,お借入れを“完済したとき”が始点になります。

ですので,平成23年に完済したのであれば令和3年に時効ということになりますし,平成25年に完済したのであれば令和5年に時効ということになるのです。

 

平成19年以前から借り入れを開始して,完済したのが平成21年以降というケースは少なくないと思いますので,

過払い金請求が現在でも行えるという方は決して少なくないですし,現に現在も過払い金のご相談を受けることはしばしばあります。

「もしかしたら」と思った方は,一度弁護士に相談してみるといいでしょう。

東京で過払い金のご相談をお考えの方はこちら

どんな相手に対しても任意整理できる?

近頃どんどん暑さが増してきて,じめじめも加わり,いよいよ夏本番という感じですね。

夏風邪などひかぬよう,私も日々気をつけつつお仕事に邁進したいと思います。

 

今日は任意整理でよく聞かれる疑問について書きたいと思います。

弁護士に任意整理を依頼すると,月々の支払いが減ったり,将来利息がなくなったりといったメリットがある,ということはよく聞かれるところです。

ところで,これが認められる理由はどういったところにあるのでしょうか。

 

結論から言うと,法的な理由はないです。

あくまで,“債務者のお願いを債権者が受け入れてくれた”といった程度の話です。

つまり,債権者からすれば,債務者のお願いを聞いてあげる義務はないけれども,

破産や再生の手続をとられるよりは貸金の回収ができるので応じている,ということになります。

 

すると,任意整理によって,月々の支払いが減る,将来利息を支払わなくてよくなる,といった結果が出るかどうかは,

基本的に相手方の出方次第ということになります。

大手消費者金融などは,任意整理のお願いをされた際の方針を決めていますので,お願いする側としてもある程度目途が立ちます。

他方で,ごく一部の地域でのみ営業しているような小規模消費者金融などは,任意整理の対応を受け付けていないということも多いです。

つまり,法的に任意整理の相談に応じる義務はない以上,あくまで決められたとおりの金額の支払いを求めてくるということになります。

 

「ほかの会社は応じてくれているのにこの会社だけなんで!」という気持ちにもなってきますが,

法的に応じる義務はない以上,このような対応をしてくる会社があるのもある意味当然ではあります。

 

ですので,任意整理を検討する際には,借入額や月々の返済可能額だけでなく,借入先の会社がどこかということも大事になってきますので,

その点についてもご注意いただければと思います。

時効の援用

2月も後半になり,東京では季節外れの暖かい日もしばしば出てくるなど,

もう寒さの峠は越えたという印象ですね。

私は非常に寒がりなので,早く暖かくなってくれると気分も晴れやかになります。

けど,もれなく花粉症も酷いタイプなので,そこは身構えないといけません。笑

 

今回書かせていただくのは,タイトルにありますように「時効の援用」です。

「時効」という言葉は誰もが一度は聞いたことがあるかと思います。

例えば,“消費者金融でお金を借りて,その後その消費者金融に返済を行っていたが,

まだ借金が残っているにもかかわらず,返済をストップしてしまった”というときに

そこから一定の期間(多くの場合は5年)が経過すると,「時効」を主張できる可能性があります。

時効は主張しないと効果が発生しません。

そして,時効を主張することを「時効の援用」といいます。

 

私は,実際に弁護士として仕事をするまで,

“時効を主張できるほど案件が放置されることなんて普通はないだろう”と思っていました。

せいぜい,個人間のやり取りでたまに存在するという程度で,いわゆる大手の消費者金融からの借金でそうしたことは起きないだろうと考えていました。

しかし,実際にはそうした大手消費者金融から借りたお金について,何年も取引がない状態が続いているということで,

時効を援用して解決するというケースがしばしばあります。

 

大会社に対するある種の思い込みみたいなものが私にあったのだと思いますが,

このような思考は一般的にも割とあるのではないかと思います。

ですので,この件に限らず,自分で結論を決めつけないことが大切だなと改めて感じています。

任意整理ができるかどうかの分岐点

債務整理手続をとるとなったときに,まず第一に検討するのは任意整理手続が可能かどうかということだと思います。

任意整理手続は,債権者各社との間で,支払っていくことができる金額での分割払いを交渉する手続です。

将来利息はカットしてくれることが多いので,それだけでもかなりトータルの支払額が減ることになりますが,

現在抱えている債務については基本的に減額されないということになります。

 

分割払いといってもやはりある程度の限度があります。

一般的に3年(36回)から5年(60回)程度の分割なら,ということで債権者が応じてくれることが多いです。

したがって,まずは現状抱えている債務総額を60で割ったときに,月々支払っていける金額の範囲内に収まっているかどうかが任意整理を行えるかどうかの目安になります。

 

月々の支払い可能額の範囲に収まっていないという場合,個人再生や破産といった手続を検討していくことになるわけですが,

どうしても任意整理以外の手続をとれない事情があるという場合もあります。

そうした場合には,どうにかして6年(72回)あるいは7年(84回)での分割を債権者に認めてもらわなければならないことになります。

債権者によっては,月々の収入額,支出の内訳等を具体的に伝えることで,その金額が月々に支払える限度であることを納得してもらい,

こうした長期分割に応じてくれることがあります。

他方で,会社として60回払いにしか応じないと決めている会社,あるいは36回払いにしか応じないと決めている会社もあります。

そうした会社が債権者となっている場合には,一般的な範囲を超えた長期での分割は難しくなってくるでしょう。

 

また,それまでの債権者との信頼関係も影響してくることがあります。

すでに滞納が相当程度長期になっている場合や,借入からの期間が浅く,信頼関係が構築されていない場合などは,

長期の分割に難色を示されることが多いです。

 

これらの様々な事情を踏まえ,弁護士はどの債務整理手続をすべきかの判断を行うことになります。

債務整理手続の種類と概略 その3

今年もいよいよ残りわずかとなり,すっかり冬らしくなりました。

弁護士という仕事柄,遠方の裁判所等に行くこともしばしばあるのですが,

この時期に北国へ行くと東京都の温度差に驚かされます。

北国の人たちにとってみればまだまだ寒くなるのはこれからということで,全然これぐらいの寒さはへっちゃらなのかなと思いきや

むしろ比較的早い時期からしっかり防寒具を着用しているなという印象もあるので,

北国の人たちは寒さに強いというよりは,寒さ対策がきっちりできているんだなぁなどと感じています。

さて,債務整理手続についてこれまで任意整理,個人再生とお話ししてきましたが,残る手続が破産手続となります。

破産という言葉は皆さん聞いたことがあるかと思いますが,任意整理,個人再生と違い,

借金を分割して支払うというのではなく,抱えている借金をすべてなくす手続になります。

このような強力な手続ですので,当然無制限に認められるというわけではありません。

破産手続のメリット・デメリットをそれぞれ挙げると,

まずメリットは当然債務から解放されることということになります。

他方,デメリットは,まず原則としてギャンブルや浪費によってできた借金については免責不許可事由となるので破産手続を選択しづらいということがあります。

また,破産をすると一定の職業に就けないことになりますので,例えば保険の外交員などを職業とされている場合はやはり選択しづらい手続となります。

加えて,破産手続は一部の借金に対してのみ行うなどはできないので,保証人がついている借金がある場合には破産手続によりその保証人に請求がいくこととなります。

ですので,保証人がついている借金がある場合にはその辺りの点についても十分考慮したうえで手続しなければなりません。

自己破産を東京でお考えの方はこちら