シートベルト装着義務違反と交通事故の過失相殺

道路交通法は,自動車の運転者はもちろんのこと,自動車の助手席や後部座席に乗車する同乗者についても,原則として,シートベルトの装着を義務付けています。

例外として,疾病,妊娠中等のためシートベルトを装着することが療養上,健康保持上適当でない者,著しく座高が高いまたは低い,著しく肥満している等の身体の状態により適切にシートベルトを装着することができない者等,やむを得ない理由があるときは,装着義務が免除されます。

タクシーに乗ると,車内に「安全のためにシートベルトの装着をお願いします」とのステッカーが貼ってあったり,ドライバーに装着を促されたりすることがあります。

これは,道路交通法上,装着義務の名宛人は運転者となっているので,運転者が助手席や後部座席に乗車する同乗者に装着させる義務を負っているためでしょう。

 

交通事故によるシートベルト未装着時の致死率は装着時の致死率より格段に高いことは,統計上明らかになっています。

そのため,助手席や後部座席の同乗者がシートベルトを装着しない状態で交通事故によって死傷した場合,シートベルト未装着を理由として過失相殺されることがあります。

ただし,過失相殺が認められるためには,シートベルトを装着しなかったために損害が発生または拡大したといえなければなりません。

この点の証明は容易ではありませんが,事故態様,被害者の受傷内容,運転者や他の同乗者の受傷内容等,個別具体的な事情を総合考慮して判断することになります。

シートベルト未装着による過失相殺が争われたら,弁護士にご相談ください。