利益相反事件とは

弁護士は、法律相談や事件の依頼を受ける際、必ず、紛争や事件の相手方が誰なのかを確認させていただきます。

なぜなら、弁護士は、弁護士法や弁護士職務基本規程に従って職務を行うべきところ、これらの法規が、弁護士は利益相反事件について職務を行ってはならないと規定しているからです。

利益相反事件とは、依頼者や相談者と利益が対立したり、対立するおそれがあって職務の公正を害する危険のある事件のことです。

例えば、離婚について妻から相談を受けて具体的な助言をした後、その夫から離婚調停事件の依頼を受けることはできません。

交通事故の被害者から加害者に対する損害賠償請求の相談の申込みをいただいても、その事故の加害者の依頼を受けていた場合、被害者に具体的な助言をすることはできません。

 

利益相反事件の受任等が禁止される理由は、①事件の当事者の利益保護、②弁護士の職務執行の公正の確保、③弁護士の品位と信用の確保にあるといわれています。

先に挙げた2例は、①事件の当事者の利益保護に反することが感覚的にも分かりやすいケースでしょう。

ところが、利益相反に当たるかどうか一義的に定まらない例も少なくなく、そのことは、弁護士法や弁護士職務基本規定の複雑な規定ぶりからも窺えます。

以下、利益相反事件について定める弁護士法25条をご紹介します。

 

(職務を行い得ない事件)

第二十五条 弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第三号及び第九号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。

一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

二 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件

四 公務員として職務上取り扱つた事件

五 仲裁手続により仲裁人として取り扱つた事件

六 弁護士法人(第三十条の二第一項に規定する弁護士法人をいう。以下この条において同じ。)の社員若しくは使用人である弁護士又は外国法務弁護士法人(外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和六十一年法律第六十六号)第二条第三号の二に規定する外国法事務弁護士法人をいう。以下この条において同じ。)の使用人である弁護士としてその業務に従事していた期間内に、当該弁護士法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であつて、自らこれに関与したもの

七 弁護士法人の社員若しくは使用人である弁護士又は外国法事務弁護士法人の使用人である弁護士としてその業務に従事していた期間内に、当該弁護士法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであつて、自らこれに関与したもの

八 弁護士法人の社員若しくは使用人又は外国法事務弁護士法人の使用人である場合に、当該弁護士法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方から受任している事件

九 弁護士法人の社員若しくは使用人又は外国法事務弁護士法人の使用人である場合に、当該弁護士法人又は当該外国法事務弁護士法人が受任している事件(当該弁護士が自ら関与しているものに限る。)の相手方からの依頼による他の事件