車両損害(車両時価額)

交通事故によって車両に損傷が生じた場合,その車両の時価額がいくらなのかが問題となります。

事故当時における中古車の時価額は,原則として,その車と同一の車種・年式・型,同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古市場において取得し得るに要する価額をいうものと考えられています(最高裁判所昭和49年4月15日判決)。

この判決は,中古車の時価額を,課税又は企業会計上の減価償却の方法である定率法又は定額法によって定めることは,加害者及び被害者がこれによることに異議がない等の特段の事情のないかぎり,許されないものと判断しました。

定額法(毎年一定額の減価償却費を計上する方法)や定率法(毎年一定率で減価償却費を計算する方法)によって中古車の時価額を算出すると,多くの場合,中古車市場における流通価格より低額となります。

保険会社は,年式・車種ごとに標準的な中古車価格が掲載された「自動車価格月報」(有限会社オートガイド発行。通称レッドブック)を参考にして,時価額を算定することが多いです。

しかし,レッドブック価格は,標準的な条件下での車両を前提とした消費税を含まない価格ですから,事故に遭った車両の使用状態,走行距離等の個別事情を考慮して,加算・減算して時価額を算定する必要があります。

例えば,東京地方裁判所平成22年1月27日判決は,日産ラシーンE-RFNB14について,レッドブックには73万円と掲載されていましたが,走行距離が8万8868キロメートル,車検残数が約9か月,マニュアルミッション車であることを考慮して,時価額は60万8000円に消費税を加えた額が相当であると判断しました。