アルバイトの休業損害

アルバイトしている方が交通事故に遭って仕事を休まざるを得なくなり,収入が減少した場合,加害者に対して休業損害を請求することができます。

休業損害の計算方法は,基本的には,会社勤めの方と同様,給与所得者として,基礎収入額(事故前3か月分の給与を基礎として算出された日額)に休業日数を掛けます。

もっとも,アルバイトの方は,フルタイムの正社員の方等とは異なり,予め毎月の勤務時間が一定していないことが多く,月ごとの収入にバラつきが生じやすいため,休業損害の算定に困難が伴います。

そこで,例えば,事故前3か月の給与を,実際の稼働日数や稼働時間で割る等して,基礎収入額が不当に低額となることを回避しなければなりません。

また,休業日数についても問題が生じます。

例えば,事故に遭った時,すでに事故後の勤務日が決まっていた期間中の休業日数は,勤務先に休業損害証明書を作成してもらうことによって把握可能です。

しかし,例えば,1か月ごとのシフト制のためまだ勤務日が決まっていない期間や,そもそも1か月の勤務日数や1日の勤時間等が予め定められていない場合等は,事故が原因でアルバイトに行くことができなくなっても,所定の勤務日に休んだとはいえず,休業したことの証明が困難になります。

そこで,その方の過去の稼働実態を参考にして,事故後も同程度の勤務が予定されていたものと考えて,休業日数を確定する等の工夫が必要です。

そのためには,賃金台帳,毎月の給与明細書,給与が振り込まれた預貯金通帳の記載等を収集して,過去の稼働実態を証明します。

 

さて,話は変わりますが,私が所属する弁護士法人心のホームページの集合写真が更新されました。

おかげさまで,毎年スタッフが増えていくので,いまや集合写真の中から自分を探すことも大変ですが,こんな感じです。

弁護士法人心 東京駅法律事務所のホームページのリンク

後遺症による逸失利益②(労働能力喪失率)

後遺症による逸失利益は,次の計算式によって算出されます。

逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(中間利息控除係数)

 

労働能力喪失率とは,後遺障害が残存したことによって事故前のような仕事をすることができなくなった程度をパーセントで表したものです。

自賠責基準における後遺障害等級表は,等級ごとに予め労働能力喪失率を定めています。

例えば,第1級・第2級・第3級は100%,第4級は92%,第5級は79%,第12級は14%,第13級は9%,第14級は5%等です。

交通事故による損害賠償請求訴訟においても,裁判所は,労働能力喪失率を判断するにあたって,通常,自賠責基準における後遺障害等級表を参照します。

ただし,あくまで参照するにすぎず,被害者の職業,年齢,性別,後遺症の部位・程度,事故前後の稼働状況,所得の変動等,被害者の個別・具体的な事情を考慮して判断します。

 

以下,自賠責保険に併合12級(等級表によると労働能力喪失は14%)と認定されたケースについて,労働能力喪失率を20%とした裁判例(東京地方裁判所平成14年1月25日判決。抜粋。)をご紹介します。

「原告の身体には,前示のとおり,腰部から臀部,大腿部付近までの神経痛等及び頸部の神経痛等の後遺障害が残存し,前者は後遺障害等級一二級一二号相当,後者は後遺障害等級一四級一〇号相当と評価できること,身体の離れた異なる部位の各神経症状が併存して競合する状態となっており,後遺障害等級一二級一二号の後遺障害が一つだけ残存する事例とは異なり,原告の稼働能力が著しく制約される可能性が高いこと,からすると,前示各後遺障害が併合によっても等級が変動せずに一二級のままとなるとしても,当裁判所は,原告の後遺障害による労働能力喪失率については,これを二〇パーセントとして評価するのが相当であると判断する。」