会社役員の休業損害

会社役員の方が,交通事故に遭って負傷し,休業したことによって収入が減った場合,休業損害が発生します。

休業損害の算定にあたって,会社役員の基礎収入をいくらとみるかについて,相手方と争いになることが多いです。

会社役員の報酬には,一般的に,実際に稼働した労務の対価として支払われる労務対価部分のほか,休業にかかわらず支払われるべき利益配当の実質をもつ部分が含まれます。

そこで,裁判実務上,会社役員の報酬中,利益配当部分を除いた労務対価部分のみを基礎収入として,休業損害が算定されます。

役員報酬中の労務対価部分は,①会社の規模・利益状況,②交通事故被害に遭った役員の地位・職務内容,年齢,③役員報酬の額,④他の役員・従業員の職務内容と報酬・給料の額,⑤事故後の役員らの報酬額の推移等を総合考慮して判断されます。

その上で,事故前の報酬の6割,8割等,一定の割合をもって労務対価部分とされる裁判例が多くみられます。

 

例えば,東京証券取引所第一部上場企業やその子会社等,大企業のサラリーマン重役であれば,役員報酬の全額が労務対価部分と評価されることもあります。

他方で,小規模な会社で,役員が会社のオーナーであれば,役員報酬中に利益配当部分が含まれている可能性が高いとみられます。

また,名目的な取締役等,実際には取締役としての業務を遂行していないのであれば,労務対価部分があるとはいえません。

役員の職務内容が実質的に他の従業員と異ならないのであれば,労務対価部分の割合は高いといえます。

役員の年齢,経験,職務内容に照らして,役員報酬が高額であれば,利益配当部分が含まれていると評価されるでしょう。

もっとも,同業種,同程度の規模の会社と比較して役員報酬が高額であったとしても,会社の業績が良好であれば,不相当に高額といえないケースもあります。

 

役員報酬は,平均的な年収より高額であることが多く,労務対価部分の判断いかんによって,休業損害額が大きく変わる可能性があります。

労務対価部分の実態を捉え,正当な休業損害が賠償されるためには,上記のような各種の要素について,客観的な資料を収集して,できる限り具体的に主張立証していく必要があります。

 

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