専業主婦の方の休業損害

交通事故の被害者は,事故による負傷のために仕事を休み,収入が減った場合,加害者に,休業損害を賠償請求することができます。

主婦の方は,事故による負傷のために家事や子育てをすることができなくても,収入が減るわけではありません。

しかし,家事労働であっても,家政婦,ハウスクリーニング業者等,第三者に家事を代行させれば,報酬を支払わなければなりません。

そのため,家事労働にも対価性があるとして,裁判実務上,主婦の方にも休業損害が認められています。

 

休業損害の計算方法は,事故発生時の収入の日額に休業日数を乗じます。

 

では,主婦の方が家事労働したときの収入は,いくらとみるべきでしょうか。

自賠責保険が用いる基準は,日額5700円です。

任意の保険会社も,自賠責保険基準に従うことが多いのが実情です。

しかし,裁判実務では,通常,厚生労働省が毎年発表する賃金センサスの女性平均賃金(産業計,企業規模計,学歴計,女子労働者の全年齢平均の賃金額)により損害額を計算します。

例えば,平成29賃金センサスの女性平均賃金は,377万8200円ですから,日額は,約1万0351円となります。

そのため,弁護士目線からすると,加害者の任意保険会社の提示額は過小にとどまるケースが多いです。

 

休業日数は,受傷のために家事労働に従事できなかった日について認められます。

例えば,入院中は,家事が一切できないことが明らかなので,入院期間は休業日数にカウントされます。

他方,通院期間中に何日休業したのか,客観的に定めることは困難です。

そこで,症状及び治療の経過,通院期間,通院日数,家族構成,家事の内容等の事情を総合的に考慮して,個別具体的に判断することになります。

裁判所の考え方もさまざまですが,例えば,家事能力を喪失した割合を急性期から慢性期まで段階的に低減させる方法(事故後30日は100%,その後の30日は50%,その後の30日は30%の家事労働が制約されたとみる方法等)が採られています。