入院付添費(付添いの必要性)

交通事故の被害者が怪我の治療のために入院した場合,ご家族等の近親者が付き添うことは,よくあるでしょう。

近親者による付添のための費用は,被害者の損害として,加害者に請求することができる場合があります。

被害者の損害と認められるためには,①入院中に付添いの必要性があり,②実際に付添いがされた事実を主張・立証する必要があります。

 

付添いの必要性は,医師の指示があれば,原則として認められますが,完全看護を建前とする医療機関が,近親者による付添いを指示することは,多くはないでしょう。

そこで,裁判実務では,医師の指示がない場合でも,受傷の部位,程度,被害者の年齢等を考慮して,付添いの必要性について判断します。

例えば,重篤な脳損傷の場合に,近親者が意識障害のある被害者に声をかけたり,被害者の身体をさすったり,被害者に容態の変化があれば看護師を呼ぶ等することは,有益な看護だといえるでしょう。

また,手や足を骨折し,ギプスで固定したり足を吊ったりして,動きが制約されている場合に,近親者が被害者の食事,着替え,歩行等の手助けをすることも,必要性があるといえるでしょう。

 

以下に,参考となる裁判例をご紹介します。

頭部顔面外傷,両側上顎骨骨折等の傷害を負い,2つの病院で合計47日入院した事例で,「S病院は,平成18年12月1日から12月4日までの入院について付添看護の必要は認められないと回答しているものの,K病院は,12月4日から12月24日までの入院について両側上顎骨,両側頬骨々折あり,歩行すると頭部痛,顔面痛,頸部痛,右肩痛が非常に強くなるため,歩行困難な状態であり,付添看護を要したと考えると回答していることが認められるところ,治療期間の長いK病院のほうがS病院よりも原告の症状をより詳細に把握していると考えられることを考慮すると,本件においては,平成18年12月1日から12月24日までの24日間について入院付添の必要性を認めるのが相当であり,K病院が完全看護の態勢を採っているとの事実も上記判断を直ちに覆すに足りるものではなく,入院付添費(付添人に生じた交通費を含む。)は日額6000円とするのが相当である」としました(岡山地判H23.9.12)。

 

保険会社から提示された損害賠償額(示談金額)には,入院付添費が漏れていることも少なくありません。

また,弁護士が交渉する場合,付添費用の損害額についても,増額される可能性があります。

入院中の被害者さんにご家族等が付き添った場合,付添費用の請求や金額についても,忘れずチェックしてみてください。

 

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