利益相反事件(弁護士法25条1号)

今回は、利益相反事件の典型例となる弁護士法25条1号(相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件)について詳しくみていきます。

25条1号の趣旨は、1号に規定する事件について職務を行うことは、先に協議をしたり依頼した相手方の信頼を裏切ることになるため、あらかじめ禁止することにあります。

「協議を受けて」とは、具体的事件について、法律的な解釈や解決を求める相談を受けることをいいます。
「賛助」とは、協議を受けた具体的事件について、相談者が希望する一定の結論や利益を擁護するための具体的な見解を示したり、法律的手段を教示したり、助言をすることをいいます。
「依頼を承諾した」とは、事件を受任することの依頼に対する承諾をいいます。
「事件」とは、弁護士が関与した事件が一方当事者とその相手方との間において同一である事件をいいます。
事件が同一といえるかは、利益相反事件について職務が禁止される趣旨に照らし、事件の基礎をなす紛争の実体を同一とみるべきかどうかによって判断すべきものと考えられています。
そのため、訴訟になっている事件名が異なる場合でも、例えば、債務者の代理人として裁判上の和解をした弁護士が、後に債権者からその和解調書に基づく強制執行の委任を受けることは弁護士法25条1号に違反するとした裁判例(名古屋高決昭和26.11.24)があります。