後遺症による逸失利益②(労働能力喪失率)

後遺症による逸失利益は,次の計算式によって算出されます。

逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(中間利息控除係数)

 

労働能力喪失率とは,後遺障害が残存したことによって事故前のような仕事をすることができなくなった程度をパーセントで表したものです。

自賠責基準における後遺障害等級表は,等級ごとに予め労働能力喪失率を定めています。

例えば,第1級・第2級・第3級は100%,第4級は92%,第5級は79%,第12級は14%,第13級は9%,第14級は5%等です。

交通事故による損害賠償請求訴訟においても,裁判所は,労働能力喪失率を判断するにあたって,通常,自賠責基準における後遺障害等級表を参照します。

ただし,あくまで参照するにすぎず,被害者の職業,年齢,性別,後遺症の部位・程度,事故前後の稼働状況,所得の変動等,被害者の個別・具体的な事情を考慮して判断します。

 

以下,自賠責保険に併合12級(等級表によると労働能力喪失は14%)と認定されたケースについて,労働能力喪失率を20%とした裁判例(東京地方裁判所平成14年1月25日判決。抜粋。)をご紹介します。

「原告の身体には,前示のとおり,腰部から臀部,大腿部付近までの神経痛等及び頸部の神経痛等の後遺障害が残存し,前者は後遺障害等級一二級一二号相当,後者は後遺障害等級一四級一〇号相当と評価できること,身体の離れた異なる部位の各神経症状が併存して競合する状態となっており,後遺障害等級一二級一二号の後遺障害が一つだけ残存する事例とは異なり,原告の稼働能力が著しく制約される可能性が高いこと,からすると,前示各後遺障害が併合によっても等級が変動せずに一二級のままとなるとしても,当裁判所は,原告の後遺障害による労働能力喪失率については,これを二〇パーセントとして評価するのが相当であると判断する。」

後遺症による逸失利益①(基礎収入)

後遺症による「逸失利益」とは,交通事故の被害者に後遺症が残った場合,将来得られるはずであった収入等の利益を失ったことによって発生する損害のことです。

 

後遺症による逸失利益は,次の計算式によって算出されます。

逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(中間利息控除係数)

 

基礎収入とは,逸失利益の算出基準とされる,交通事故にあった時点における被害者の現実の年収です。

・給与所得者の基礎収入は,原則として事故当時の収入額とされ,事故の前年度の源泉徴収票等,客観的な資料によって判断されます。

・自営業者や農業従事者等,事業所得者の基礎収入は,原則として事故当時の所得額とされ,一般的には,事故の前年度の所得税確定申告書や課税証明書等,客観的な資料によって判断されます。

・主婦等,家事従事者の基礎収入は,原則として賃金センサスの女性労働者の平均賃金額となります。

・学生の基礎収入は,賃金センサスの全年齢平均賃金額となります。

・失業者や高齢者等,事故当時に就労していなかった方は,収入がないため,原則として逸失利益が認められません。

もっとも,事故当時,労働能力と労働意欲があって,就労の蓋然性が認められる場合は,それまでの職歴や収入等を考慮しつつ,賃金センサスの賃金額を参考にして基礎収入を定めることもあります。

 

計算式が決まっているとはいえ,例えば,申告額より多くの収入を得ていた個人事業主,兼業主婦,大学進学が予定されていた高校生等,基礎収入をいくらとみるべきかが争点となるケースは少なくありません。

逸失利益の妥当性について,交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。